玩具堂

子ひつじは迷わない うつるひつじが4ひき

「しきたりなのです」 その音声は静かで、揺ぎ無く、聞く者を黙らせる何かがあった。 「この館では、鏡を見ることが禁じられています。みなさんも手鏡などお持ちであれば、部屋に入る前にお預け下さい」 始まりからして、ミステリな雰囲気でワクワクでした。…

子ひつじは迷わない 泳ぐひつじが3びき

「前に仙波さんが言っていたことを思い出して、納得しました」 「解り合いたいというのは、危険な欲だというお話です。梶尾さんも相手の方も、お互いのことを知りたい、把握していたいって思うあまりに、それができなくて苦しんで、落ち込んで、荒れてしまっ…

子ひつじは迷わない 回るひつじが2ひき

「いきなりこんなこと言い出して……やっぱり変ですよね、わたし……」 「まぁ、変かどうかで言えば変だけど」 思わず本音を言ってしまった。佐々原がますます肩を落とす。僕は慌てて、本音を重ねた。 「それは、良い変だよ」 成田と仙波のコンビが絶妙ですね。…

子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき

「単純に言えばそうですが……何と言うか、その―」 私は少し迷って、視線をさまよわせました。仙波さんが、成田くんが、きょとんとした顔でわたしを見ています。気後れ。でも。 頭に浮かんだそれを口にしたくて、伝えたくて、続けました。 「好きな人とああで…