雪乃紗衣
「命を賭けるなら、もっと別なことに賭けるって、さ」 「そういっていましたね」 「見たいな……。あんな娘が生きてつくる、先の世界が見たい」 旺季の頼りになる姿をみてたら、この人が王になってくれたら……と思わずにいられなかった。でも、劉輝のためにまさ…
「俺はねぇ、旺季の国が見たいとずっと思っていたよ。どんな国になるか、鮮やかに眼裏に浮かぶ。だがお前は、劉輝様の国が見たいと思ったことがあるか?想像できるのか?」 蝗の被害が始まるというのに、王が蚊帳の外に置かれるとは。頼りなさばかりが目立つ…
あの地震。星の特異な運行。目的をもって壊された碧州の神器。何より、縹本家と連絡が途絶えて久しい。あらゆる連絡手段が完全に遮断された。 何かが起ころうとしていた。……いや、少し違う。何かが終わろうとしていた。本当はずっと前から始まっていたものが…
「何もかもさらけだすことが『心を許す』ということではないんだよ。この先、君はもっとたくさんの自分を見つけるだろう。たくさんの自分を見せられる相手をさがしなさい。いつか誰かを愛して、一緒にいたいと思う日だってきっとくる」 「……一緒にいたいとは…
……本当は、わかっている。ここまで清雅にたたみかけられた大きな理由。 それがまぎれもなく紅秀麗(じぶん)という存在にあるということを。 劉輝のヘタれっぷりに驚きましたが、それ以上にセーガのサドデレっぷりがよかった。いっそ、乗り換えちゃえばいい…
孫尚書は若い王が嫌いじゃない。うまく育てば、いい王になるかもしれないとも思う。 でも、もう遅いのだ。 駒はそろい、時はきた。 藍楸瑛が紫劉輝に夢を見るように、孫陵王は旺季に王の夢を見る。 弱い者が切り捨てられることのない優しい夜の夢を、見るの…
「ええ。まったくどこをどう切っても救いようのないひどい男です。私も長年仕えてきましたが、なんていうか……正直、あんなに人でなしろくでなしな鬼畜男は見たことがありません」 「天上天下唯我独尊、傲岸不遜、その行いは悪辣かつ卑劣極まりなく、極道のほ…
でも、この王は違う。 「……ひとりぼっちなのね」 「……二年、よく頑張ったと思います」 疲れ果てたような劉輝の泣き顔が、邵可には痛々しかった。 どうして楸瑛が十三姫を置いていったのか。王のこの姿を見ればわかる。 「……もう、限界なのね……王様」 王様の…
「そんな待ってください!樹様に桃もらったら何かあるんですか!?不幸の桃とか!?」 「別に。私のように人生が三倍愉快になるだけだ。よかったな」 「あからさまに嘘ですよねそれ!?長官が愉快に見えた例がありません」 「何を言う。私は常に愉快痛快不愉…
「……では、黎深様も、今のままでは秀麗はやっていけないと?」 「それを決めるのは私ではなく、秀麗だ」 「秀麗が官吏としてやっていけなくても、かまわないと?」 「かまわんな。元気に生きててくれれば別にそれでいい。他に何も望まない。官吏になりたいと…
「……主上、そんな言葉どこで覚えたんです?」 「フフ……もらった本で、世も日々庶民の勉強をしているのだ。偉いだろう。自慢の主上だろう?ささ、遠慮なく褒めてくれていいぞ」 「そんな言葉より先に、謙虚という言葉を覚えてほしいもんですね」 「……あの……そ…
「毎年振られつづけてね。だからこれを渡して終わりにするつもりでいる」 「え!?お、終わり、って」 「最後くらいは困らせないであげたいからね」 「……いいん、ですか?」 「ああ。私はその人を好きになってとても幸せだったけれど、私ではその人の『幸せ…
熱い涙の連続でした → 感想
茶州の小さな村を襲う病。それはかつて影月の育った村を全滅させたもの。 いち早く危険に気づいた影月は、あらゆる対処方法を示した上で単身その地へ向かった。自らの命の短さを知りながら。 「とうの昔に尽きるはずだった僕の魂を、陽月は繋いでくれました…
朝賀 - 新年に際し、各家の代表、各州府の高官が貴陽に馳せ参じ、王と御代を寿ぐ。 貴陽に国中の要人が集まる年に一度の機会。水面下で外交合戦が繰り広げられる時節。 つい先日州牧となった秀麗と影月のアイデアを茶牧はまとめあげた。朝賀に間に合わせるた…
即位間も無いダメ王の側近に抜擢された絳攸。だが王はまるで仕事をしない。 おかげで優秀な頭脳を持ちながら不毛な日々を過ごしていた矢先、妙な噂を聞きつける。 城内に幽霊が出るという噂を。 一計を考えた絳攸と楸瑛だが……。 そんな秀麗と王が出会う以前…
未だ茶州に入りきれていない秀麗と影月。 指定期間内に着任しなければ官吏としての地位を剥奪されてしまう。 だが妨害は続く。 ようやく目の前にというとき、茶州の州都は全面封鎖されてしまった・・・。 愛情の差である饅頭の話はニヤリとしてしまった。 影…
茶州へ赴任すること。そう任命された秀麗と影月。 だが、茶州は現在最も荒れている州。 しかも茶家、官吏がにらみ合う州。 当然のごとく茶家は秀麗と影月の茶州入りを妨害しようと企み・・・ 王の権力ってのはそんなに弱いのか、ということはおいといて。 ま…
男社会の朝廷。王である劉輝がようやく通してくれた法案。女性官吏の雇用。 自らの夢のため受けた試験で見事合格を果たした秀麗。 だが、待ち受けていたのは周りの圧力と誹謗と過酷な労働だった……。 いやはや。秀麗って人は恵まれているな。 むろん本人の努…
王の元から戻ってしばらくが経ったある日のこと。 夕飯を食べにきていた文官は言う。 「ひと月ほど朝廷で働く気はないか?」 今度は後宮ではなく外朝で。 女性である自分が働くことなんてできるはずがない! だが、現在朝廷は夏バテで倒れる人が多く、人手不…
彩雲国きっての名家・紅家のお嬢様である秀麗。だけど、家計は火の車。 米の飯なんて滅多に食べれず、麦飯で何とか生き延びる毎日。 そこへ持ち込まれた仕事の依頼。 男色の噂で名高いダメ王子の教育係として後宮に入ってほしい。 身の危険はない。だけど、…