モロッコ水晶の謎

助教授の身代金」「ABCキラー」「推理合戦」「モロッコ水晶の謎」の四編からなる短編集。

かつてドラマではまり役を演じ「助教授」と呼ばれた男性が誘拐された。指示通りに身代金を用意したが、受け渡す事が出来ず、男性は死体となって発見された・・・・・・。
ラストの火村の内に激しさを秘めた静かな怒りの言葉が印象的。

  • 「ABCキラー」

初めに殺されたのは、安藤町で朝倉という男性。二番目は別院町で番藤という女性。場所と名前のイニシャルが、AA、BBと続く。だが何の意味があるのだろう。遅々として進まぬ捜査。そして次の被害者は千曲町で茶谷という男性。イニシャルはCCだった・・・・・・。
ABCで順番に殺すなんて無茶ということを説明しつつ、うまくまとめた良作。

  • 「推理合戦」

火村と有栖川と女流作家のちょっとした飲み話。10ページにも満たない短編だが、ニヤリとしてしまうラスト。

乾杯、といって飲み物に口を付けた直後に亡くなった男性。だが、被害者がグラスを取ってから薬物を入れるのは不可能な状況。頼みの綱の火村も「迷路にはまった」という始末。いったい犯人はどうやって被害者の飲み物に毒を入れたのか?
有栖川作品にしては珍しくちょっと反則というか離れ業と言うか、そんな感じのミステリィ。伏線はあったわけだから気づかなかった方が悪いのかもしれないが。とはいえ、おもしろかったからいいか。


モロッコ水晶の謎 - 有栖川有栖