らのさい!

ライトノベルサイト管理人たちの悪ノリが一冊の本となりました。


らのさい!

らのさい! (LA文庫)

  • 作者: 羅漢連,いろんな人
  • メーカー:LA文庫
  • 発売日: 2009/05/03
  • メディア: 文庫

とあるライトノベルサイトを立ち上げた新人ブロガー・平カズ。彼を取り巻く先輩や同期のサイト管理人たちは、驚くことにみんな美少女だった!人間じゃないけれど!! 

六つの短編+四コマ+各執筆者のあとがき+解説二人+設定資料+ほんとうのあとがきが収録されています。元ネタは言わずと知れた「ばけらの!」。
装丁やらあとがきやらの細かいネタなどは誰かが解説してくれると思うので、各物語の感想を書いてみことにする。

ことりんの章 ことりん、がんばります!

by 長屋言人(@kotohito)

メイドロボことりんが、ロボである自分は小説を理解できないのではないか、と悩むお話。
主要メンバーを登場させて、ラ管連な雰囲気を描きながら、物語を読む人の捉え方の違いなどを見せてくれてますう。サイト運営における難しさ(というと言い過ぎかもしれないけど)もありますが、それでも続けていけるのは、やっぱりつながりを感じられるからなんだろうなあ、という嬉しい終わり方でした。いい意味でオーソドックスなお話ですね。

「じゃあ—恋、してみます?」

幕間 ゲームは踊る、されど終わらず

by soundsea(@soundsea)

ラ管連ボードゲーム模様を、切り取ったお話。8ページという短いお話にも関わらず、平和さんのヘタれっぷりがとても伝わってきて、思わずにやりとさせられる。
ただ、ボードゲームを知らないと伝わりにくいかなと思わなくもないところがあるけど、みんなの愉しんでる様子のほうが伝わってくるので、ひょっとしたらコレ読んだ人はボドゲに参加したくなるかもしれませんね。
にしても、ラスト一行の容赦なさに、「soundseaは鬼である」ことを再確認させられます。

「悪いけど、のべる。僕は禁書ポーカーは相性が悪いから遠慮して—」
「うむ、気にするな。そなたの相性がどうであれ我が勝つ故大人しく負けるがよい」

でゅろんの章 ラノベ部

by でゅろん(@arika_aoi)

学園もの。部室に集まって、活動内容を考えるという名目で、仕事を平和……じゃなかった平カズに押しつけるお話。
読みにくい……。なんていうか、アニメのような映像を文章にした感じというのかな。それと、ネタを詰め込みまくってるせいか、落ち着くまでちょっと時間かかった。もうちょっとネタ減らした方がいいような気がします。
ただ、ヒロインであるでるたんと平カズの恋の雰囲気は、今回の執筆陣の中で、一番よかった。今度は純粋に恋愛ものを見てみたいと思いました。

「はぁ、この鈍感もどうにかしたほうがいいんだけど、あたくしには荷が重いわ」

断章 触らぬものに祟りなし

by 月季(@getsuki)

ラノベ界最強の女装少年は誰か、といういずみとけーこの論争に挟まれた平カズが、いずみの一言からトンでも騒動に巻き込まれていくお話。
この展開は素晴らしすぎる!いずみの脳内で浮かんだ妙案は、僕の脳内でうららボイスで再生されました。ぜんぜん違和感ない。
この一言だけでも大満足だったけど、ここからさらにニューフェイスあこやんを交えて、彼女がブレイクしたきっかけとなった名セリフへと持っていくから、参りました。
一番楽しいコミカル話だったなあ。

「っ!?……平和さんのえっち!!!!」

のべるの章 されど積み人は本と踊る

by 舞風ゐんど(@mykaze)

のべるが積本の素晴らしさを説くお話。
序盤は生徒会展開。くだらないギャグがジャブのように効いてくる。積んデレとかやめて。
そこから、積本の実体を見るべく物語は、のべるんの自宅へとたどり着くんですが、ちょっと耽美なところがあったりしてニヤリ。やっぱ吸血鬼はこうじゃないとね。あ、違うか。吸話鬼か。
積本が高じて……というところから見える真実は、まさに壮大で、オチも最高!と思ってたのに、Nooooooo!!!!!
これはひどい

積読には積読だけの愉しみがあるのだ」
「言ってみろよ」
「例えば、読む順考え」
「何ですか、それ?」
「自分の枕元に、これの次にはこれを読もう、その次はこれ、とどんどん積んでいくのだ。ファンタジーは続けて読むと世界観が混乱するから間にラブコメを挟んで読もうとか。ミステリー気分になった時は、積読を漁って、立て続けに五冊読んじゃおう!とか。そうして積読を漁っていたら、買ったことを忘れた本が出てきて、得した気分になったり。そうこうしている内に最優先事項のシリーズの新刊が出て、順番組みなおしだよっ!とか。ついつい三十分ぐらい悩んでしまう」
「その間に本読めよ!」

らのさいスピンオフ!時、止める秋

by 和泉うらら(@urarai)

うららさんによる四コマ漫画。時載りでるたんは現在時間を止めるストックはどれくらいあるか、という話。
……切実に思いました。おれ、時載り能力ほしい、と。っていうか、僕が時を止める力を持ってたら、同じような使い方をするだろうなあと思ったのは内緒である。ええ、内緒ですとも。

「い……いえない…ッ」

けーこの章 繋がる、世界

by 小森圭(@KeiKomori)

本屋に憑いた幽霊のけーこが、ラ管連メンバーと出会うまでのお話。
これは個人的にヒット。なんで、でるたんが愛でられてるの?とか、むにょるげの変態話*1はともかくとして、生前の記憶はなく、本を読む時間はあっても、語り合うことができない彼女が、インターネットという世界では、自分の言葉を発信できて……というあたりの嬉しさと、そこから一歩先に進むことができないもどかしさが、とても伝わってきました。

全てを壊してしまいたくなる衝動にかられるやりきれない気持ちと、ラ管連メンバーと出会ったことによる温かさと。じわっときたのは、別に恥じゃないと思う。とてもよかった。
小森さんには、ぜひともルカとむにょるげの出会いのお話も書いてほしいなあ。

「だいたいおぬしは甘え過ぎなんじゃ。一度も我らに話しかけもせず、勝手に悩んで勝手に落ち込んで、それで何を得られるつもりになっておるのじゃ?」

全部読んだ感想

各登場人物の設定(妖怪の種類やら属性)をベースに物語を書いているとはいえ、執筆者によってバラつきがあるのはむしろおもしろかった。ひょっとして、この人の目には、リアルな登場人物もこういう風にも見えたりしてるのかなー、なんて思いもあったりして、ニヤリとしてしまう。
そんな中、のべるに関しては、全員がまったくブレることなく描かれていたことが印象的でした。まさに設定の勝利というべきか。まあ、リアルでもあんな感じだからイメージつかみやすいというのもあるかも。

平和さん……じゃなかった平カズについても、ヘタれであることは共通しているんだけど、一番うまくヘタれっぷり(愛されっぷり)を表現してたのは、soundseaさんかな。ゐんどさんの平カズはツッコミのキレが良すぎたし、小森さんの平カズは格好よすぎるので、ダメです。もっとヘタれてください。

それにしても、勢いだけで作ったというのに、ここまで立派なものを作ってしまう管理人たちは、ほんとすごいと思う。このメンバーならもっともっとおもしろいことをやってくれるんじゃないかな。
ライトノベルから始まった繋がりが、今後どういうモノを生んでいくのか、とても楽しみです。

*1:むにょるげは捕まっていいと思います