SFファン交流会「『物語工学論』X『15x24』 これで君も小説が書ける!?」メモ

メモったのを簡単に整理しただけなので、いろいろ間違ってるかも知れません。その際にはご指摘いただければ幸いです。
15x24の話を中心に、twitterや物語工学論などが話題に上がってました。

  • (今月で完結とのことですが)もう私の手を離れたので、あとは輪転機がまわれば出ます。
  • 15x24を思いついたきっかけは?)SD文庫の編集長M富さんから、何かやりませんかと言われて。一巻のあとがきに書いたことは、ほぼ実話です。以前から温めていたわけではない。
  • (書く上で苦労したことは?)苦労……うーん、書くのに時間がかかったという意味では苦労したが、やってるときは楽しかったから(苦労は感じていない)。主要人物は15人だけど、名前が出てくるのは40人。ワープロExcelでなんとかなった。シートの一枚目にそれぞれのキャラ、二枚目にタイムスケジュールを載せて、空いてるところをいろいろ埋めていった。今回はほんとうにExcelに助けられた。Excel小説といってもいい。
  • ちなみに15x24読んでない人?(数人手を挙げる)では、ネタバレは控えめで。
  • キャラ。伊隅君は人気がない。
    • うさみ: 私はマーチが好きです(注:うさみさんじゃなかったみたい。会場の人でした。ごめんなさい)。嫌われるだろうと思いながら書いたんですか?
    • マーチは九割ぐらいの人から嫌われると思ったけど、一割ぐらいは濃ゆいファンができるのでは。自分に似ているからという理由で嫌う人が多かった。
  • (最初に出来たキャラは?)ほぼ登場順です。話を進めるのと同時に思いついた。
  • 話のパターンと24時間という設定はできて、その後タイトルを思いついた。おかげで15人だすことになった。13x24でもよかったけど、タイトルに濁点が欲しかったので(イチゴー)15に。
  • 12人ぐらいはすぐ思いついた。あとの2、3人は結構苦労した。アイドル・オサリバン愛と真面目な右翼・藤堂。この二人のキャラ属性が多いのは、ネタが尽きてるから(余計にいろいろ付けてしまう)
  • 一番初めに思いついたのは笹浦。でも、彼は動かない人なので、しかたなく寝てたとして登場させた。
  • あのあたりを書いてたときは心に余裕があって、普段書かないキャラも書くようになっていた。新城カズマではじめてじゃないかな。アキホみたいなキャラは。
  • 高校生の生態については、取材と、ファミレスでの盗み聞き。
  • でも会話そのものを文字には出来ない。聞いてみると分かるけど、人は結構相手の話を聞いていない。ずれまくっている。聞いてる分には面白いけど、性格に再現すると、文章にはならない。
  • 藤堂。右翼を出したいと思って。ああいった抗争は、最初の段階では無かった。話はでかくしたほうが面白いだろうと、三分の一ぐらい書いてから思いついた。
  • 自殺を止めるという基本プロットは、二巻の途中で消化してしまって、書いてる方も飽きてくる。これは書き始めの頃に予想していたこと。で、いろいろ話を追加した。
  • おこがましいけど、トールキン指輪物語を書いたときも、こんな感じだったのではないか。トールキンの息子さんが発表した本の中に、トールキンの話があって、共感できるところがあった。
  • 前半で、あの二人は行方不明にならないと面白くない。行方不明なら誘拐。誘拐なら銃を出さないと。そんな感じで作者も先が分からないまま書いていたから、読者も先はわからないんだろうなあ。
  • 昼過ぎまでの話の流れはほぼ決まっていた。昼過ぎまでを書き上げたときには、午後三時ぐらいまでが決まってて、次の日(24時間後)のところもだいたいできていた。間は空白。特に午後六時以降は、わざと決めずにいた。わけのわからなさ感を出したかった。
  • 午後四時ぐらいまで書いたときに、メモには午後八時のことを記していた。でも、うまく合わなくて捨てたネタも。おかげで、寿命が延びたり縮んだりしたキャラも?
  • 最後の最後は予定通りのところに辿り着いたと思う。途中はともかく。
  • 一巻の冒頭と、六巻(最終巻)の真ん中を一番初めに書いた。途中どうなっても、そこに辿り着けばいいやと。山登りのように、山頂を目指すけど、ルートはそのときそのときみたいな。トールキンもそうなんじゃないかな。実際山登りしてたらしいし。
  • 自殺など死に対するテーマ。(うさみ:あとがきにも書いてましたよね)。なんでおれあんなこと書いたちゃったんだろう(笑)。編集長は、ラブロマンスを書かせたかったらしい。正面から断らず、やんわりと別のことならできますよと提案した(ラブロマンスは別の方が書いたのかな)。色恋より興味があった。
  • ピンと来たのは、当時ネット心中が報道されて、全然知り合いではない二人が落ち合って、飛び降りだというニュースを見た。しかもひとりは、死ぬ前に遺書メールを友人に送っていたらしい。自殺ではなくカジュアルな文面だったので、返信がきていたらしいけれど、その話を聞いて、もし何らかの事情で死ぬのが遅れてメールを見たら、どうなったんだろう?それがこの話のきっかけ。現実にはそういった間違いというのは起こりえないけど、そこで間違いを起こすのが物語。あの事件については、落ち着いたら調べてみたい。
  • (ハードカバーで出す案もあったとか?)ありました。半分ぐらい書いて、分量がすごくなって、どういう形で出版するのがいいかを悩んだ。ライトノベルというか、若い人に向けたものになるかわからない。若い人向けのつもりはあったけれど、話が大きくなってきたときに、わかってもらえるからはわからない。テーマというよりも……(執筆)当時、この話は小説として、どんな分類をされるのかわからなかった。
    • 読んでる人もわからないんじゃないでしょうか
    • なんだかわからないというよりは、アレも入ってるしこれも入ってるし、で分類しにくい。たぶん一番入ってるのは青春小説かな。
  • (分類したいという気持ちは?)現実的な話をすると、本を作る者として、書店のどこに並べば売れるかなどを考えることはある。
  • (全六巻としてバーンと売り出すのは珍しいですがそのあたりは?)原稿用紙三千枚をどうするかとして考えたら、どうしようとなって。3000枚や全六巻というのはシリーズとして考えたら長くないけれど、一気に出版するのは珍しいかも。
  • (2冊、1冊、1冊、2冊という売り方も珍しいのでは?)そこはSD文庫の判断。
  • 本を作ることにここまで関わったのははじめて。原稿を渡すだけではなく、装丁やら帯など、いろいろ関わった。六冊に割ったときの場所も自分の判断。非常に貴重な体験。編集プロダクションも自分のところだったので、気分は同人誌に近い。
  • (そのあたりの作業が二年の空白ですか?)そのあたりも含めて、かな。二年の空白は、まだいろいろとオフレコが多い。この小説の刊行と同時に、ほにゃららしようぜがあったけど、リーマンショックで……ほにゃららがほにゃららとか。でも景気が回復したら……!
  • (そういえば、ライトノベル超入門が出版されたときに、ファン交流にゲスト出来て頂きましたが、そのとき既に15x24の話が出ていましたね)全回出たのは、2005年?その時期だと六巻を書いてるぐらいかな。
  • (三千枚という話も出てました)ほぼ予定通りでしたね。
  • (それから何ヶ月かで出るかと思っていたのに!)笑
  • Twitterが出たとき、やべえとか思いませんでした?15x25と関わりが深そうな意味で)Twitterを始めたのは、去年の夏ぐらい。こんなに盛り上がったり、楽しい者だとは思わなかった。
  • (私は普段日常の話題をケータイメールでやり取りする機会があまりなかったので、この話はちょっとイメージしづらかったけど、メールではなくTwitterに置き換えて、イメージできました)今だったら、この話は成立しないか、別の話になっていたかも知れない。2005年から2007年ぐらいは、ネットはブログ的であったり2ちゃん的だった。このころはYouTubeすら来ていない。2008年になると、YouTubeやニコ動がやってきた。ストリートビューもそのあとぐらいかな。もし執筆中にあったら書いてた。つまり2005年から2007年というのはひとつ前の世界。この話を頑張って2007年に出していたら、却ってわかってもらえなかったかもしれない。ちょっと間が空いたのは、結果として良かった。
  • 今月で完結するわけですが、来年になったら全部揃ったものを読んでくれる人がいるんじゃないかと思います。リアルタイムで読んでいる人はむしろ貴重になる。指輪物語もそうだけど、一気に読む人とリアルタイムで読む人では、また違った感想を持つのではないかな。
  • (ポタカズマ企画も)。やりましたね。自転車でおにごっこ。物語を精密になぞってたわけじやないけど、雰囲気を味わって貰えればと。ちなみに円城塔さんに捕まって、えー。サインしたけど、場所が新宿のジュンク堂だったので、円城塔さんの本を買ってサインさせました。やり返したよ。
  • (ああいった企画をしたのは)どうやって読んで貰えるかということを考えて。読んで貰えれば、いける自信があった。周囲で読んで貰った人も、二巻の途中まで読んだら止まらないと言われたので、ならば三巻同時に発売して、一巻は無料にすることも考えた。集英社に無理と言われたけど。でも、この時の無料熱が高まって、ネット公開とかいろいろやった。自転車での三日間は筋肉痛で大変だった。完結した後も何かやりたい。
  • (会場から質問:何人ぐらいにサインを?)一日で多いときは、十人ちょっとかな。ただ、鬼ごっこのときは、本気で逃げ回ってたから、捕まりませんでした。本末転倒ですね(笑)
  • (この話は東京でないと難しいのでは?)東京だとトリックがつかえる。人しか通れないところとか、電車とか。あと取材して分かったけど、公園が結構多い。
  • (都市伝説は)でかい話にしたかったので、慣れ親しんだモチーフとして都市伝説を持ってきた。あとハローバイバイで、都市伝説が盛り上がってた時期でもあった。2006年
  • (ちらっとだけ出てきて、重要なことをつぶやくキャラが気になります。死にかけのおじいちゃんとか)世界を作り込んだ場合、ストーリーにちらっとでも人を出すと、その人の他の話も出てくる。ただ、オチがなかったりして、ストーリーに入り込まないものになる。どうしても制限が出来てしまうんですね。チェーホフのけん銃のように、伏線は回収すべき、みたいなことを期待されるので。
  • うさみ:たしかに言われてみれば、おじいさんがでてきたら伏線と思い込むところがありました。ちょっとだけ接触する人たちとの広がりが感じるところ。15人の話であると同時に、東京の話でもあるんですね。
  • Twitterで受け付けた質問。キャラや組織の名前の由来は?)私の作品で、枯野はあちこちに登場します。藤堂もよく出ますね、主にやくざか右翼で。苗字が基本ギャラクタにつながってる。ある種スターシステム。一族縛り。
  • 高遠は、星のバベルの主人公から。たぶん親戚です(笑)きさいちさんは、フランス文学者の名前(注意:と聞いた気がする)。名前の由来については、ネットの考察サイトに、八割方見抜かれていた。有働は、事務書の近所を自転車でうろついてるときに見かけて。いい名前や苗字はためてる。小林丸はぶっちゃけスタートレック
  • Twitterしながらイベントするのははじめてですが、そういえば、Twitterを初めて見た人?)会場、4,5人手を挙げる。うさみさんTwitterの説明。
  • Twitterはとてもお手軽感がある。SFな人ならなじみやすいのでは。これテレパシーだよね。
  • いまではブログとTwitterの主従がいれかわって、Twitterが主になっている。私にとってはとても楽。水魚の交わりがあっている。
  • ブログはシステムが無市来に強制しているものがある。タイトル付けなければいけないでしょう?これがね。
  • Twitterによって思考や表現に影響はあったか?)表現はとくに。ただ思考は変わった。はじめは自分の考えをPostしていたが、だんだんと生煮えのネタなど、他人の考えを聞くようなPostになった。思考を開放するような感覚。反応を見ながら、揺らいだり引きずられたり、思いもしなかったことが浮かんだり。
  • 情報をまず出して、反応を受け入れて練り込む。ちょっと違うけど、オープンソースに近いかも知れない。権利を放棄することによって、より大きなものを得るといった具合に。Twitterは、これをうまくまとめたシステムだと思う。
  • (そうなると著作権とか問題になりますね)まず著作権がどうかわっていくか。本にしても再版システムなどの変わるのか、まだ見えていない。個人的に気になっている。
  • 電子書籍についていえば、本をめくる感覚が再現できれば、抵抗感がなくなるのかなと思います)目の疲労という問題もある。あと、紙の本についていえば、物足りないこともあって、例えば全文検索が出来ない。データになると、また別の楽しみ方も生まれてくるのではないか。
  • Twitterに欲しい機能はありますか?)うーん。Retweetを繰り返していくと、140文字を超えてしまうので、たとえば、自動で圧縮してほしいかな。あとふたつのRetweetをリミックスすることができたりとか。
  • Twitterでの宣伝をされてましたが、フォロー関係がないと広がりは難しいのでは?)たしかに。でも抜け道はいろいろある。タグや検索など。ちなみに裏技ではないですが、私はPostするとき「私は〜」というような一人称は使っていない。必ず「新城カズマは」にしている。これだと新城カズマで検索したら出てくるので。地味な営業をしております。
  • TwitterとThumblrは併用すると便利。
  • (年末にエアノベルで何かやるとか)。まだいろいろ決まっていない。セカイカメラの発表を見て、Twitterでスゲーと言っていたら、セカイカメラの人とフォローし合ってて、意気投合したことがきっかえ。セカイカメラエアタグ機能を使うけど、ゲームとも言えないものになるかな。鬼ごっことか。
  • セカイカメラのバカバカしく素晴らしいところ。エアタグでエアギターでエアコンサートが出来る。何がいいって、コンサートの許可を取る必要がない。見たくない人はみなくていい。SNSですね。
  • 例えば、結婚したら思い出の場所にエアタグを張って、10年後に見に来て、思い出すなど。いろいろ思いつく。別れたらタグを消せばいいし(笑)
  • 暴走族も、エアタグで落書きすれば、商店街も綺麗になるのに。
  • エアタグによって、国土は二倍になった。
  • (うさみ:話を聞いてて思い出しました。「地図男」という小説があって、登場人物は地図を持っているんですが、その地図には土地ごとの物語が書き込まれているんです。まさにエアタグですよね)
  • Twitterに話を戻して)大正時代の資料を見ると、女学生は、一日三回ははがきのやり取りをしていた。時間的差はあるけど、これもTwitterみたいなものですよね。
  • (会場の人:いまでも女の子は授業中に手紙を回しますよ)放課後はどうするんですか?(交換ノートをします)。それはまさに人力Twitterですね。面白さの根底は変わっていなくて、速度と楽さが変わっていく。
  • (会場の人:恋愛の速度も速くなりました。以前は、はがきでやり取り電話が補佐。電話料金が安くなってからは電話でやりとり。今はメール)そういえば、高校生の取材をしたとき、メールの返事が来ないと不安になるというのがありました。一日で2000通のやり取りもしていたとか。そこまでいくと、ちょっと返事がないだけで誤解を招くんですね。恋愛の速度が変わったのかも。ちなみにブラインドでメールを送ることも実演して貰いました。すごい。
  • 15x24だけじゃなくて、物語工学論の話をするため、無理やり方向転換します。Twitterに限らないですが、最近はアマチュアでも何かを表現できる場所ができて、プロと繋がることも出来るし、その距離感が縮まっているように思います。物語工学論は、あらゆる人が物語を書くために必要なものみたいな印象がありましたが、動機は?)あらゆる人が物語を書くために、というわけではなく、物語を書くときに自分の頭の中で起きているのはなんなのだろうというのを冷静に見てみたかった。この本の理論を使って本当に物語を書くことが出来るのかはわからない。ただ、自分なりにやっていることを、現象から法則を見つけて理論立てて圧縮したのがこの本です。続きもやりたい。応用編にいくか、別方面の話にするか。
  • 誰もが物語を作れる、作るべきだ、作ろう、は同じようで違う。いつでもどこでも作れるかという問題もある。例えば、歌うことは誰でも出来る。でも、いつでもどこもで素晴らしく歌えるかと言ったら、そんなことができるのはやはり少数かなと。
  • この本を書く上で、参考としたのが手塚治虫の漫画の書き方。専門的なことをびっしり書いたあと、最後に、普通の人が趣味で漫画を書くにはどうしたらいいか、というのが収録されているんです。これがすごい。できなくてもいいけれど、出来るってことを知っていると、全然違いますから。
  • (会場から質問:笹浦だけ回想モードなのはどうしてか?)演出的なものがありますが、もうひとつは彼は特異な立ち位置なので。物語とは別のところでいろいろね。
  • ちょっとだけネタバレすると、最後は××××。私はゲラを読む度に泣いています。
  • Twitter質問:動かしやすかったキャラは?)動かしやすいというか、書きやすかったのは笹浦。ややこしくしてくれたのは歩乃香ちゃん。
  • (来年以降の予定は?)双葉社でWeb連載していた作品を来年早々に出せるかな。一応ミステリ。あと、大森望さんのNOVA2を……NOVA1は原稿落としたので。新城は自分で原稿を落としたら再デビューすることにしていたので、来年からは新人SF作家新城カズマになります。よろしく。
  • 12月20日にNOVA1のトークショーがあります。円城さんと大森さん。罰ゲームで参加します。

もうほんと盛りだくさんな三時間でした。話が面白くてあっという間だったなあ(といいつつ身体は痛い)。
新城さん、うさみさんお疲れ様でした。

P.S.

参加した方々のTwitter IDを来ておけば良かったなと、今さら後悔。