2010年に読んだ本から10作

2010年に読んだ本は、小説に限ると何冊かちょっとわからないですが、感想数が703冊分あったので、たぶん、720冊いくかいかないかぐらいだと思います*1。ちなみにコミックを含めると1100冊を超えてて、ちょっと頭おかしいんじゃないかと思うけれど、小説だけで1200冊直前まで読んでる人がいるから、ぜんぜん大丈夫だと思い直した。今年は600冊ぐらいに抑えたい所存です。
ま、そんなことはどうでもよくて、2010年に読んだ本から、これって作品をあげてみる。

神の棘(1)神の棘(2)
今年読んだ本でこれをあげないわけには行かない。須賀しのぶの「神の棘」。いわゆるナチス・ドイツを舞台に、優秀なSS員と、ヒトラー政権に反発する修道士という、相反する立場となった幼馴染が繰り広げる人間ドラマ。全二冊の物語はずっしり重く、己が正義と思い込んでる人たちの残酷さが胸に痛く、さらには栄光を掴んだ人の没落がまた……そして最後に待ち受けている出来事には、呆然とするに違いないです。魂を抜かれるほどの物語でした。(神の棘(1)感想 / 神の棘(2)感想

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

これほど情景が美しく浮かぶ物語も珍しいと思います。「叫びと祈り」は、国際動向を取材する男が砂漠やスペイン、ロシアなどで遭遇した事件を描く連作短編集です。そこで見えるのは、日本とは異なる風景と価値観で、胸に残る言葉は数多くありました。同時にゾクッとすることも。未知なるものは、時に怖くもあるけれど魅了されることのほうが多いんだなと思いました。この人は全力で追いかけると誓う。(感想

春狂い

春狂い

「春狂い」は、生まれながらにして、人を狂わすほどの美しさを内包していた少女の物語です。周囲にいる人が少女に狂っていく様もすごいけど、それ以上に少女が抱えた絶望がすごい。傍にいてほしい人は皆離れていく、それでも生きていかねばならない辛さは、読んでいるうちに、心も体も痛くなっていきます。それでも、感じるのは深い愛だから、すごいものを読んでしまったと思いました。(感想

黄金の王 白銀の王

黄金の王 白銀の王

すごいものを読んでしまったといったら「黄金の王 白銀の王」も忘れられない。互いを殲滅させるべく戦い続けている民族の頭領が、このままでは他国に滅ぼされると、お互い臣下には何も語らぬまま手を結ぶ約束をする、というお話は、読み始めたら止まらない。大局は険しく、溝は深く、理屈は分かっていても、心が反応してしまうこともあるし、担ぎ上げようとする者もいるから……平和とはどれほどの努力の上に成り立つものかと、手に汗しながら読みました。ラストがまたね……。って、何でこれ在庫無いんですか、幻冬舎さん。早く文庫化してください。布教するから。(感想

天冥の標 2 救世群天冥の標 3 アウレーリア一統
全十巻予定の「天冥の標」の二巻と三巻が2010年に出版されました。二巻は感染症アウトブレイクしていくパンデミック、三巻は宇宙海賊を追う物語。それぞれリンクするところはあるけれど、時代がぜんぜん違うので、独立した物語としても読めます。しかも単巻で読んでも最高に面白いうえに、繋がりが見えるとニヤニヤが止まらない!もしかして、とんでもないシリーズが生まれる時を目の当たりにしているのかもしれない。(天冥の標(2)感想 / 天冥の標(3)感想


この他、翼の帰る処(3)も入れたかったけど、下巻が出てからかな(チラッチラ)。「みをつくし料理帖」シリーズや「クシエル」シリーズも紹介しようかと思ったけど、残り五冊はラノベにしよう。

戦う司書と世界の力 BOOK10 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と世界の力 BOOK10 (スーパーダッシュ文庫)

戦う司書と世界の力」何と言っても戦う司書シリーズの最終巻が凄かった。絶望的な前巻のラストからの逆転劇の連続には息つく暇も無いぐらい。傲慢に見えるハミュッツの孤独に胸を痛めて、世界を救うきっかけを持ってきた爆弾に感動し、やがて集まった武装司書たちの活躍に、興奮が止まらなかった涙が止まらなかった。これ以上ない最後に大満足しました。(感想

最後といえば、長らくお待たせなフルメタル・パニックの最終巻「ずっと、スタンド・バイ・ミー」もありました。上下巻もなんのそのというか、上巻のラストから熱い展開の連続で、下巻に入ったら調所で涙させられる。泣かないシーンなんて無いですよ。テッサにはほんとやられました。わかっていても、素晴らしいと思えるラストを見て、素敵な物語に出会えてよかったと心から思いました。(感想

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)

いろんなシリーズを手がけている入間人間さんですが、その中でもよかったのが「六百六十円の事情」。この人の青春ものはドンピシャすぎる。小さな町のSNSの「カツ丼つくれますか?」というトピックスから生まれる五組の老若男女の物語は、ありふれていながら眩しくて、もやもやとしたものを抱えながら生き生きと描かれていて。それぞれがさりげなくリンクしながら、独立していた物語が、最後になって繋がったとき、大きな感動に包まれました。(感想

今一番オススメなシリーズは何かと言われたら「サクラダリセット」を推す。もうね、雰囲気がとてもいいんです。能力者の集まる咲良田の地で起こる出来事は、切ない想いも多いけれど、そんな中に見えてくる優しさが素敵。一巻だけでもそれなりですが、三巻まで読むとそれまで見えなかった部分が見えてきて、評価が急上昇なんてもんじゃない。一言がもたらす衝撃とか、遣り切れなさもあるけれど、その残酷さが美しいです。きゅん。
ちなみにどういう話か興味はあるけど、いまから追いかけるのは……と躊躇する人がいたら、四巻の最後の話だけ読むと良いです。四巻は短編集なんですが、最後に収録されている「ホワイトパズル」は、サクラダリセットシリーズではないのに、雰囲気と魅力はシリーズそのままなので。(感想

金星特急 (1) (ウィングス文庫)

金星特急 (1) (ウィングス文庫)

栄華か死か。絶世の美女たる金星の花婿を目指す者たちが乗り込んだ金星特急でのサバイバルを描く「金星特急」は、少女小説だけど穏やかじゃない旅路で、謎ありサスペンスあり恋愛ありで、面白さが止まらない。現在三巻まで出ていますが、ひとつ謎が解けたと思ったら、さらに謎が深まったりして、もうどうなっちゃうんだか。少女小説ってだけで読まない人がいたらもったいなすぎるので、ぜひ。(感想

このほか、王子と奴隷の入れ替わり「烙印の紋章」や無双対決「火の国、風の国物語」とかもよかった。あと、同著者で二作入れるのはどうかと思ったからはずしたけど「電波女と青春男」が大好きです。読んだら一週間は、やっちゅーに。
烙印の紋章火の国、風の国物語電波女と青春男

ちなみに少女小説で推すなら、王道な「シュガーアップル・フェアリーテイル」、切なさに胸が痛む「氷雪王の求婚」、甘さに砂を吐く「悪魔のような花婿」(昨年のbooklines.netのアフィNo.1)、男装の麗人ロディアさんぱねぇ!と叫ぶこと間違いなしな「レッド・アドミラル」かな。「プリンセスハーツ」も毎度毎度楽しくてどうしてくれようかと思います。えるしってるか密接は甘い言葉だ。
シュガーアップル・フェアリーテイル氷雪王の求婚悪魔のような花婿レッド・アドミラルプリンセスハーツ

気がつくと10作以上書いてる気もするけれど、そんな一年でした。

っていうか、去年読んだ本というなら、まとめ読みした本のほうが印象が強い気がする。

  • 続きが出ないと知りながら読み、続きが出ないことを嘆きながら、なお、読んでよかったと思った「銀の海 金の大地
  • なんでこれを読んでなかったんだと過去の自分を殴りつけたくなる「ウィザーズ・ブレイン
  • 読むときは三冊ずつ。そしてその三冊目が毎回毎回超弩級な「薔薇のマリア
  • 始まりからは予想もできないところに着地したけど、最高に面白かった「銃姫
  • お嬢様学校から引っ越した女の子の恋と冒険にきゅんきゅんだった。中学生編までは最高傑作級「丘の家のミッキー

…………おれ本読みすぎじゃね?

このほかにもいろんなシリーズに手を出してきたのは、多くの方々のお薦めがあったからですこんちくしょう。いえ、素敵な物語と出会うきっかけをいただけて大変感謝しています。今年もよろしくお願いします。

*1:官能小説は除く