谷原秋桜子
「そりゃ、むちゃだよ。現地の治安は特に悪くないらしいけど、それでも日本なんかと全然違う。若い娘の一人旅なんて、危険すぎる。あそこはフランス語が準公用語だから、何なら、おれが……」 いいかけて、修矢はぎょっとしたように口ごもった。 「おれが……ど…
「この前は『一晩寝ているだけで五千円』というふれ込みだったわよね」 「だから、それ自体は本当だったろう」 「まあ、そうだけど……今度は?」 「立ってるだけで一日二万円!」 「一日……に、二万?」 目がくらむような金額。 「まさか、変な仕事じゃないん…
「君はそういうが、状況が状況だからねえ。そう推定せざるを得ないじゃないか」 「彼女は、そんな恐ろしい犯罪を犯すような子じゃありません。わたしが保証します」 「しかしねえ、彼女が犯人じゃないとすると、とんでもない矛盾が生じてしまうよ。何しろ、…