そのときは彼によろしく 【amazon】


そのときは彼によろしく - 市川拓司
子供のころ。自分たちは他人と交わることが無かった。
いつも絵のうまい裕司と少年みたいな花梨と一緒に遊んでいたあのころ。
それはもう 15年前の話。
ふとしたことから、付き合うことになりそうな女性にそのことを話した。
「素敵な話ですね」と、その女性はいった。


その日、仕事場に戻ると一人の女性が店の前で待ち構えていた。
アルバイト募集の紙をひっさげて。
初めてあったのに、なぜか懐かしい気がする女性。
いつしか惹かれる自分に気づくが・・・。


この人の文章はリズムが優しい。
読んでいてこちらまで優しくなれるような、そんな文章。
何より登場人物たちが愛すべき人たちだからだろう。
一番感動的なのは主人公の父の言葉。



強い力だ

それさえあれば、あの空の向こうにいる誰かとだって私たちは結びつくことができる
父親に、いやそれ以外の人にでも、こんな言葉をかけられて泣かずにいられるほど、僕は終わっていない。
暖かく、穏やかな雰囲気満載の物語。


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いま、会いにゆきます