恋愛寫眞 もうひとつの物語

彼女は嘘つきだった。ぼくはいつも警戒していたけれど、いつも騙されてしまう。
そんな彼女と出会ったのは、大学の裏手にある国道。
ふとしたことから知り合い、いつしか共に過ごすことが多くなった彼女。
でもぼくには好きな人がいて、彼女もそのことを知っていて。
それでもいつもと変わらぬ毎日を過ごす中、ふたりで応募した写真のコンクールで
受賞したのは彼女だけだった。
お祝いとして彼女が願ったことは、ほんの小さな幸せ。
そして彼女は出て行った。下手な嘘をついて……。


ある意味、典型的な恋愛小説というか青春小説というか。
それでもこの人が手がけると、なんでこんなに優しい物語になるんだろう。
ひとつひとつのエピソードがとても印象的。
特にラストの個展のシーンで飾ってある写真。
かつての自分を、そして今の自分をどんな思いで撮ったのか。
たったひとりに伝えるために撮った写真。
あのシーンは忘れられない。


優しくほろ苦い三角関係。切なく、そして暖かい恋の物語。


恋愛寫眞 もうひとつの物語 - 市川拓司