征馬孤影・風塵乱舞 アルスラーン戦記(5)(6)

「草原の覇者」とも言うべきトゥラーン軍がペシャワール城を襲来した。
最悪の事態を招く前にと、王都まであとわずかではあったが、引き返すアルスラーン一行。
苛烈を極めた戦闘ではあったが、ある程度の目処がたった矢先に、
ルシタニアの虜囚となっていたアンドラゴラスが帰還した。
パルス軍は使えるべき人間がふたりとなり……


アンドラゴラスは国王としてそれなりに有能であるかもしれない。
少なくともルシタニアが来る前までは平和が保たれていたのだから。
だが、それでも上に立つものとしての器量はアルスラーンがはるかに凌ぐ。
それはナルサスの旧友を裁いた件で証明されている。
ただ、処刑をするだけなら誰でもできる。あのような裁きができるからこそ有能なのだ。


今回もっとも印象的だったのは裁きのシーンだけれど、もうひとつ、印象的なシーンがあった。
アルスラーンがかかわった唯一の同年代の女性。エステルとのやり取り。
そしてエステルがアルスラーンから受けた言葉。


「ほんとうに困ったことがあったら、牛車の右側の車輪の軸をはずしてごらん。すこしは役に立つと思うよ」


そこから出てきたものを見たときのエステル。
そういう手助けをしようと考えたアルスラーン
できればふたりで幸せになってほしいと思ったシーンでした。
今のところそれは叶わぬわけですが、はたしてどうなるのか。


孤立したアルスラーンが再出発するシリーズ第五、六巻。


征馬孤影・風塵乱舞 アルスラーン戦記(5)(6) - 田中芳樹


次作の感想: [田中芳樹] 王都奪還・仮面兵団 アルスラーン戦記(7)(8)
前作の感想: 落日悲歌・汗血公路 アルスラーン戦記(3)(4)