半落ち

アルツハイマーになった妻。
日付や曜日を良く間違える。時計の時刻が読めない。物忘れがひどくなり、用事をすっぽかしてしまう。
ミスを防ぐためにメモをしても、そのメモを忘れてしまう。
愛する息子の命日に行った墓参り。それすらも忘れてしまった妻はショックを受けて言い出した。
殺して。俊哉のことを覚えているうちに死にたい。せめて母親のままで死にたい……。
梶は妻の思いに応えた。そして自首してきた。
現職刑事の殺人。嘱託殺人。
取調べを受けている梶は素直だった。これなら、と思った取調べをしていた志木。
だが、梶が自首してきたのは殺人を犯してから二日後。
その間に何をしていたのか、梶は一切、口を割らなかった……。


中途半端な供述。それが「半落ち」。
取り調べる刑事、検事、記者、弁護士などから見た梶を描いた物語。
なぜ彼は語らないのか。空白の二日間をどう過ごしていたのか。そこが物語の焦点。
警察官による殺人ということで加わる隠蔽体質が、調べることを困難にさせる展開。
いやあ、面白い。
途中で「半落ち」の理由には思い当たるのが残念だけど、心の奥に秘められた思いを、皆が気づきながら見守る姿が非常に好印象。年代が上の方の人が興味を持ちそうな作品だと思います。


さほど長い物語ではないので、秋の夜長にいいかも。


半落ち - 横山秀夫