少女には向かない職業

中学二年生の一年間で、あたしは人をふたり殺した。
夏休みにひとり。冬休みにもうひとり。
少女の魂は殺人に向かない。
だけどあの夏、あたしの近くにいたのは、あいつだけ。
宮乃下静香 −さつじんしゃ − だけだったから……。

少しずつ引き込まれる悪意。いつしか手を汚すことを考える少女。
そのことに気づいたときの恐ろしさ。引き込まれそうになる恐ろしさ。
雰囲気は素晴らしい。
妙なところでリアルさにかけるなと思ったら、妙なところでリアルだったりする。


ただ、もっとミステリアスにできたんじゃないかと。静香の怖さを表現できたんじゃないかと。
それが本当に惜しいと思う。


ちなみに、本の帯に


「砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない」の気鋭が贈る
なんて書かれていたおかげで、以前に読んだ「砂糖菓子〜」と比べてしまいましたが(雰囲気も似てたので)、読んだときの衝撃はあちらの方が上かなあ。
両方読んだ人に意見を聞いてみたいところ。


少女には向かない職業 - 桜庭一樹