ネクロポリス necropolis

アナザー・ヒル。そこは故人と再会できる場所。
V.ファーの住民は、ヒガンの時期にそこを訪れ、死者を暖かく迎える。
死者は生者と見分けがつかない。だが、死者 - 「お客さん」は絶対に嘘をつかない。
ゆえに死者との会話は法的な証拠として取り上げられることがある。
今年は例年になく、アナザー・ヒルを訪れるものが多い。
それは「血塗れジャック」による連続殺人事件があったからだ。
学士の研究者としてジュンは親戚のつてを頼り、何とかアナザー・ヒルのヒガンに参加することができた。
いよいよ、アナザー・ヒルに入れる。
期待と興奮に満ち溢れたジュンを待ち受けていたのは、鳥居に吊るされていた男だった……。


日本と英国の文化を受けついだ V.ファー。
死者が現れるという不思議な現象を見るべく参加したジュンの視点から描かれる物語。
初めの方は詳しい説明がないため、風習などで主人公と同じようにつっかかるところが
多かったけれど、徐々に明かされるその世界にいつしか慣れ親しんでいることに気づく。


絶対的な聖域として守られてきたアナザー・ヒルでの殺人事件。
初めて出会う「お客さん」。夜に訪れる風。事件に関する皆の推測合戦。禁断のガッチ。
ノスタルジーを感じさせる描写。
ファンタジィな出来事。
魅力的な謎。
興味を引いて止まないものばかり。


後半に入ってからはホラーテイストも加わり、一気読みさせられました。
最後のオチも何ともいえない恐ろしさ。
もはやすべてのジャンルを兼ねそろえたといってもいい傑作。
恩田ワールド全開の作品です。


モットーに並び立つ陛下に栄えあれ!


ネクロポリス necropolis 上 - 恩田陸ネクロポリス necropolis 下 - 恩田陸



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