Separation

高校の三年間、同じクラスだったけれど、彼女と話すようになったのは受験が近づいたころだった。
それから三年分の時間を取り戻すように、合い、話し、共に過ごす日々。
やがて大学へ進み、就職をきっかけに、ぼくらは結婚することにした。
そんなある日のこと、彼女が突然言い出した。
「ねえ、最近私痩せたと思わない?」
気のせいだと思っていた。だが、体重だけではなく、身長も縮んでいた。
そう。彼女は若返っていたのだ……。


徐々に若返り、いつしか出会ったころすら飛び越えてしまった女性。
そんな女性と共に過ごした物語。


デビュー作でここまでスタンスが固まっていたとは思わなかった。
何でこの人はこんなに優しさ溢れる文章が書けるのだろうといつも思う。
愛しているが故のつらさが前面に現れる。


この本は中篇 2編からなっていて、どちらも主人公、相手は同じ。
ただし出会いから未来への過程はまるで別。


若返りの物語である「Separation ― きみが還る場所」と
自分を見失い、相手を見失う「VOICE」。


痛みは別ものでも感じることは同じ。
せつなく心がふるえる物語。


Separation - 市川 たくじ