聖遺の天使

「そう思うと、政というのはむなしいものだな」
「なぜそう思うのだ」
「貴様にはわかっているのだろう。この湖が生まれるまでの歳月を思えば、国家の寿命など儚いものだ。あれほどの権勢を誇った東ローマ帝国も、今や歴史に名をとどめているだけではないか」
「めずらしく卑屈だな」
からかうような口調で、レオナルドが言った。その瞳は、優しげに細められている。
「悲観するのはきみの勝手だが、忘れないことだ。たとえきみが死んで公国が滅ぶことがあったとしても、ぼくが残す作品が、きみの治世を永劫の未来に伝えるだろうということをな」

あのダ・ヴィンチが探偵に! → 感想