とみなが貴和

EDGE 5 ロスト・チルドレン

「何かいうことはないのか?」 挑発するように言うと、両目を強くつぶって唸りながら考え込んだ宗一郎は、ぱっと目を開けた。 「すっげーうれしい。ありがとう」 「こちらこそ、ありがとう」 素敵な物語をありがとうと言いたいです。→ 感想

EDGE 4 檻のない虜囚

「でも、宗一郎くんにはわたしたちの目が行き届くけれど、錬摩くんは一人でしょ。思い詰めてないか、心配だわ」 「あいつは思い詰めると、行動が極端だからなあ」 こぼれた溜め息が二つ重なって、兄弟は顔を見合わせて笑った。 「おとぎ話のような幸せなんて…

EDGE 3 毒の夏

失われ、永遠に果たされることはないと一度は諦めた約束が、今、甦る。 ― なあ、今度、お前の拳法とおれの空手と、どっちが強いか勝負しようぜ。 忘れたと思っていたのに、まるで昨日聞いたことのように、明るい声ごと、藤崎の言葉が耳に響く。 ひとつが与え…

EDGE 2 三月の誘拐者

「どうして?そんなに奴が信じられないか」 「信じてますよ。だからうそだというんです。本気でそんなことを言ったとしたら」 凍りつくような瞳で見下ろしながら、嫣然と微笑んだ。 「あいつの理性を疑いますね」 足早に立ち去る錬摩の後姿を見送って、内藤…

EDGE

「なあ、錬摩。正直に答えろ。おれは今、お前のそばにいるのか?」 視線の奥に、微かな怯えを見て取った。拉致されてから今まで、この男はどんな目に遭わされて、すぐに訪れるかもしれない自分の生の終わりを見つめていたのだろう。 錬摩は薄く微笑んだ。た…