宝珠なつめ

記憶の繭 おもひでや

「どのような思い出がご希望でしょう?」 「えーとね、数学と物理」 「は?」 「できたら英語も」 「当店は学習塾ではございませんが」 「そんなのわかってるわよぉ。どんな記憶でもパッとアタマに入れてくれるんでしょ?公式でも英文でも」 「あ、分かった…

天国の対価 おもひでや

「あの、僕、この名詞見て来たんですけど……」 なんて切り出したらいいのだろう。 「ここのお店では、なんでも好きな、その……」 言いよどんでいる孝志に向かって、男はかすかな笑みを口元に浮かべたまま、静かに頷いた。 「ええ、左様でございます」 男の態度…