池上永一

テンペスト(下) 花風の巻

「国を豊かにするのが私の夢なんです。国の役に立ちたいだけなんです」 「子どもを流産してまで成し遂げたい夢なんて民が聞いたら迷惑でしょうね。真鶴さんは自己犠牲に酔ってるだけよ。自分の子どもを不幸にする人間が、どうして他人の幸せを願えるのかしら…

テンペスト(上) 若夏の巻

「役人は何を残すことができますか?農民は食べ物を与え、商人は生活を豊かにする品を与えるというのに、役人は物を生み出すことができません。役人は道を示すことでしか残れないのです。名誉など道の前では塵にすぎません」 寧温は続ける。自分は王府の役人…