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東雲侑子は短編小説をあいしている

「協力って、何に?」 「恋愛の……いろいろって言うか……」 「ど、どうやって?」 「うん、だから、あの……」 東雲は一度ごくりと喉を鳴らし、それから俺を見据えた。 「私と、付き合って欲しいの」 これは良かった!いい距離感の青春物語ですね。甘酸っぱい思…

とある飛空士への夜想曲(下)

「知ってるかな、ビーグル」 青年は空へむかい、届かない言葉を送った。 「あなたはぼくの憧れなんだ」 もう、じんわり涙が止まらない。国力の差は歴然としていて、どんな精鋭であったとしても物量には勝てず、ジリ貧とわかっていながら、それでも飛び続けて…

六花の勇者

「勇者の数は六人。それ以上ということも、それ以下ということも、絶対にありえん」 「だけど、現に七人いるのよ」 「そう、七人おる。どういうことじゃ」 めちゃめちゃ面白い。嫌疑をかけられたところからどうやって逃げ出すか、偽者はどうやって結界を作動…

レッド・アドミラル 宿命は絆を試す

あなたが今、どんな苦しみの中にいるのか、果たして苦しみの中で意思を保てているのかはわからない。でも、できることなら名を呼んでくれ。 あなたが求めてくれている限り、自分はどんなところにでも行ける。 そんな気がしているから。 ああもうすっごい良か…

双帝興亡記 戦塵外史 六

「これから慌ただしくなろう。戦もつづくに違いない。あるいは志半ばで―」 「陛下」 無礼を承知で一歩詰め寄り、言葉を遮った。 叱責は、なかった。 「だから、そのまま忘れないでくれ。せめて、お前だけは」 夢半ばにして皇帝の孤独を味わった男と、皇帝で…

GOSICK 8(下) 神々の黄昏

「……いつかまた、か」 ブライアンが弱々しくくりかえした。 「それって、いい言葉だな」 「そうかね?」 「そりゃ、そうさ。未来がおまえを呼ぶ声だろ……」 母なる人の思いを受けて、苦しみながらも、九城という希望に向けて歩むヴィクトリカの姿に、じんわり…

夢の上(3) 光輝晶・闇輝晶

ああ、夢は、どうしてこんなに美しいのだろう。 叶わないとわかっていても、こんなにも心を掴んで離さないのだろう。 読み終わったときの感動をどう言えばいいんだろう。巡り巡った物語が、戻ってきたとき、ゾクッとなった。もう、本当によかった!→ 感想

スメラギガタリ(弐) 外道陰陽篇

「……私には、あなたが恐ろしい……。あなたが口にする言葉もそれによって明かされていく世界の真の姿も……まるで確たるものと信じて踏みしめていた大地が、橋から徐々に崩れ落ちていくようで……何もかもが、恐ろしくて堪らない……」 これは面白かった!!!いやー…

GOSICK(8)(上) 神々の黄昏

「それより、君のほうこそ、ぼくをちゃんとみつけられるかなぁ?」 「……わたしは必ず君をみつけるとも。たとえ世界の果てと果てにはぐれてもだ」 ああ、もう、本当に、ふたりの思いが、これ以上ないほど伝わってきて、たまらなかった。「大切な君」の温もり…

七姫物語 第六章 ひとつの理想

「私は永年、永年、上を見ていたいと思っています。高くて遠くに憧れます。理想が遠くにあるから、そのために頑張ってきました。多分、近くにあっても、理想は遠いんです」 思い描く夢も理想も、何時だって、遙かに遠い。 「まだ背伸びをして手を伸ばしてい…

金星特急(4)

「ありがとう」 ノートを丁寧に一枚破り、ペンを構える。 「遺書か」 「ラブレターだよ」 最高に面白かった!いろんな謎が興味をそそる。それにしてもユースタスの涙が……うまくいってほしいな。→ 感想

天と地の守り人 第三部 新ヨゴ皇国編

「これが、タルシュの枝国になった民の運命だ!異国で朽ち果て、鳥に啄まれ……」 チャグムの頬を、涙が伝った。 「なんのための死だ?いったい、なんのための死だ?」 ああ、もう。何度涙ぐんだことか。人の思いに胸がつまるばかりでした。最後までほんとうに…

ハウスメイトの心得

「私はただチャンスを与えてほしいと言ってるだけ。二週間だけ試させて。それでもしあなたの頭が変になりそうだったら、私、出ていくわ」 また貸しによって、なし崩し的に始まった共同生活は、始めこそ距離を置いていたのに、いったん意識し始めたら……という…

魔石の伝説(7) 霊たちへの祈り―「真実の剣」シリーズ第2部

「なぜです!なぜ彼女が生の世界を救うために死ななければならないんですか!そんなのはまったく筋が通らない!」 彼は剣の柄をきつく握りしめた。 「ぼくがそれを止めなくちゃならないんだ!そんなのはただのばかげた謎かけだ。謎かけのために彼女を死なせ…

浪華の翔風

「昨日や今日の権力者に、<在天別流>が潰せると、本気で思とるんか」 「何を」 「<在天>の血を引くお前には、判っとるはずや ―― この都の本当の主が誰か」 これは面白かった!ただの歯医者がなぜ殺されたのかという謎を追っていくにつれて、気づけば江戸…

獣の奏者 外伝 刹那

「わたしは……生まれてこなければよかったなんて、思わない。たとえ、生まれる前から、こんな人生を生きるのだと知っていたとしても」 すすりあげるように、息をふるわせていた。 「あなたは、自分の生に、後悔しかないの……?」 短篇集。どのお話も、ちょっぴ…

マルドゥック・フラグメンツ

「あたしはまだ戦場にいる。それはそんなに悪い場所じゃない。どっちに向かって自分を回転させれば良いか知ってれば……」 そして振り返る / どこか諦めたような微笑み。 「……言ってよ、幸運をって」 短編なのに、一編一編が長編並みの濃密さと面白さを魅せて…

クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー(1)

「そのうちの一人が、逃亡する際に妙なことを口走っていたそうだ」 ゲイルは先を続けた。 「『喰わないでくれ』、と」 掟に従い、機械的に戦ってきた者たちが、アートマと呼ばれる印を受けて、大いなる力を得た代償として、異形への変貌と他者を喰らいたいと…

名探偵に薔薇を

「なら瀬川、お前は何を期待して生きてるんだ?」 瀬川は煙草をくわえた。火はつけない。 「昔、祈ったこともあった」 呟くように続ける。 「それきりだ」 もう、何がなんだか。第一部のメルヘン小人地獄の見たて殺人事件は、鮮やかな解決を見せて心踊らせて…

スメラギガタリ 新皇復活篇

「血は、生家の歴史は、あなたの生き方を縛っていますか」 「いいや。血も、家の歴史も、既に私という人間の中にある」 これは面白かった!安部晴明の子孫率いる陰陽寮VS芦屋道満の子孫という戦いは、どちらにも正義があるから見応えあります。一気読みだっ…

ソードアート・オンライン(7) マザーズ・ロザリオ

「キリト君は、何て……?」 「絶剣がSAOプレイヤーだった可能性は、まずないだろう、って。なぜなら……」 「……」 「もし絶剣があの世界にいたなら、<二刀流>スキルは、俺ではなくあいつに与えられていたはずだ、って」 この世界に降り立った最強の剣士の話。…

県庁おもてなし課

「なぁ、いつか多紀ちゃんって呼んでいい?」 「いつかって、いつですか?」 「……もうちょっと俺がカッコよくなったら」 せめてもう少しあがいてから。 俺が憧れるあの人たちに、もっと恥ずかしくないようになってから。 「待ってますから、急いでください」…

GOSICK 7 薔薇色の人生

「お化けより、超常現象よりもっと怖いのは、現実の世界で、大切な人を永遠に失うことよ」 これはとても面白かった。これまでと同じようなヴィクトリカの可愛さと明晰な頭脳を描きながら、よりエンターテインメントしていました。しかも、どんなトリックを使…

本日は大安なり

「式や披露宴は、する意味があることです。大勢の人の前で祝福され、幸せであることを見せる。そんなくだらないことを言う人たちにだって、見せつけてやりましょうよ。あれだけ大勢に祝われたのだから、という事実は、この先のあなたたち二人にとって、必ず…

Fate/Zero(3) 王たちの狂宴

「この戦いに、私は何も求めまい。何も勝ち取るまい。今はただ……キャスター、貴様を滅ぼすために剣を執る」 セイバーとランサーが格好いいと思っていたら、それ以上にライダーが格好良かった。あの状況で酒盛りとか、考えることが凄い。それにしても、英霊た…

断章のグリム(14) ラプンツェル・上

「それで気が済むなら、恨まれてあげるのも<騎士>の役目だわ。そんなもの、私は気にならないから問題無い。恨んで、それを支えに生きていけるなら、そうすればいい。私が<泡禍>を憎んでそれを支えに生きているみたいに、同じようにすればいい」 「……」 …

柳生十兵衛秘剣考

「十兵衛は何が気に入らないのだ?」玄達は首をひねった。 「塚原卜伝が現れて、何かしら具合の悪いことでもあるのか」 「ああ大いに具合が悪いとも」 柳生十兵衛は、楽しげな目で玄達の顔を覗き込んだ。 「剣聖塚原卜伝は、いまからざっと六十年も昔に亡く…

新約 とある魔術の禁書目録

「自覚しろ。その上で楽しもうか。……『人間を超える』というのがどれほどおそましいのかを見せてやる」 退屈と思ったのも束の間。「新入生」が関わってからは、怒濤の展開に息をつく間もない。一方通行さんが格好いいのは当然としても、浜面もすごかった。ど…

円環少女(サークリットガール)13 荒れ野の楽園

「わたし、魔法使いになってから、ずっと思ってたんですよ」 涙もろい彼女が、名気ながら拳を突き出し返す。 「神さまってひとを、ぶん殴ってやりたいって」 これは、奇蹟のお話だと思いました。本当に凄かったです。っていうか、凄かったとしかいいようがな…

ムシウタ 11.夢滅ぼす予言

「今までさんざん怖がってきたはずだ。自分の虫や、他の虫憑きの虫にな。虫憑きになったせいで苦しんで、痛い思いをして、辛い目にも遭ってきた。もういい加減、ウンザリしてるだろ?」 「その原因の一つが、目の前にいるんだぞ」 「今は――怒る時だぜ」 霧に…