築山桂
「昨日や今日の権力者に、<在天別流>が潰せると、本気で思とるんか」 「何を」 「<在天>の血を引くお前には、判っとるはずや ―― この都の本当の主が誰か」 これは面白かった!ただの歯医者がなぜ殺されたのかという謎を追っていくにつれて、気づけば江戸…
「けど、それは迷信で……」 「迷信と違うわ。現に、うちの亭主は死んだやないの」 許嫁が戻ってくるということで、寺子屋の今後について考えるお話。いつまでも三姉妹でと行かないのはわかっていても、急な話は迷うよなあ。女の幸せとか男の身勝手さが随所に…
「たった一文やけど、重い一文やと思ってます。うちらは、この一文が子供らがこの先歩く道に小さな明かりを灯すことを信じて、一文稽古を続けてるんです」 「闇に灯る」というタイトルの意味が見えるシーンはじんわりきた。丁稚の草太の思いも繋がっていく一…
「確かにお役人は金に汚いし、お金持ちは身勝手や。そやけど、商いで儲けたお金を学問所に注ぎ込んで、貧しいひとに学問の機会を与えようて考える金持ちもおる。筋の通らんことがどんだけ多くても、お金持ちにもお役人にも、本当に町の者のことを考えてくれ…
「章がいなくなると、寂しくなる」 「左近殿……」 左近が立ち止まって、章に向き直った。 「早く一人前の医者になって帰ってこい。そうしたら……」 あの頼りなかった男が、左近との出会いからこんなにも変わるなんて……でも、左近に対しては、一歩踏み切れない…
「決まっているだろう。他に生きていく術がないからだ」 「え」 「いきなり何を言い出すのかと思えば―誰もが章のように心のままに道を選んでいるわけじゃない。……そういう人間もいるんだよ」 男前な娘さんと、頼りない三男坊が、事件を通じて恋に発展に……す…
「私は自害などしないわ」 茜は強い口調でいった。 「何があろうと生き延びてみせる。生き延びること、本物の豊家の血を後に繋ぐこと。それが私に課せられた、ただ一つの務めだもの」 自身の存在に揺らぐ出来事を乗り越えていく様がいい。ああ、これが上に立…
「やはり、瓜二つや」 「え……?」 「茜はん、あんた、そっくりなんですわ。私が船に乗せた、あの訳ありの娘さんに」 落ち延びた豊臣秀吉の孫・茜が、弟の行方を追って大阪へ戻ってきたら、やっかい事に巻き込まれて、というお話。ドキドキとワクワクさせてく…