冲方丁

マルドゥック・フラグメンツ

「あたしはまだ戦場にいる。それはそんなに悪い場所じゃない。どっちに向かって自分を回転させれば良いか知ってれば……」 そして振り返る / どこか諦めたような微笑み。 「……言ってよ、幸運をって」 短編なのに、一編一編が長編並みの濃密さと面白さを魅せて…

天地明察

「まことに……私で、よろしいのですか」 すっと正之の背が伸びた。 「安井算哲よ。天を開いてに、真剣勝負を見せてもらおう」 晴海は、たまらず衝動的に座を一歩下がり、平伏し、 「必死!」 叫ぶように応えた。 最高傑作!算術に向かい、天に挑む人たちの姿…

テスタメントシュピーゲル(1)

「ろくでなしなりの忠告だ。よく聞いてくれ」ミハエル―まるでこれから戦闘が始まるというような厳しい目つき。 「こうした状況では、どこで誰がどんな罠を仕掛けているか分からん。くれぐれもMPBとしての本文を外れず、独走するな。独断と独力で何かをしよう…

オイレンシュピーゲル 肆 Wag The Dog

今、あたしが前へ進めるのは、きっと、それのお陰だから。 今、あたしが前へ進めるのは、きっと、それを手放さなかったから。 今、あたしが前へ進めるのは、きっと、それを握っていることがたった一つの誇りだから。 きっと、このあたしの命も苦痛も怒りも、…

スプライトシュピーゲル4 テンペスト

「逃げる者を追いかけて殺すなどという真似はやめて下さい!ここはいったいどこなのです!どこの紛争地帯なのです!ここはあたくしたちの都市ではないのですか!彼らの国の指導者を裁く場ではないのですか!その行いに値する都市であるべきではないですか!…

ばいばい、アース 4 今ここに在る者

「許されるものかよ」 ベルが吠えた。 「こいつァ烙印だ。私のことを想いながら、あの闇の中で悶えつづけろ」 「ばいばい」。その言葉が心に響くお話でした。まだまだ先を思わせる終わり方に大満足。 → 感想

ばいばい、アース 3 爪先立ちて望みしは

「なるほど、それか。あなたが信じているとは、ベルが俺を倒しに来ることか」 シェリーは答えない。ただ、自分でもその答えに戸惑っている顔を、無邪気にもあらわすばかりだった。 「滅ぶさ」 彼はしいてシェリーから目をそらし、殺伐として呟いた。 「俺が…

ばいばい、アース (2) 懐疑者と鍵

「なんだ……」 力なく笑いが零れた。 「こんなに……簡単なことだったなんて……」 笑った顔のまま泣いていた。 「世界はいつも手遅れになってから和解の手を差し伸べる……」 希望が絶望へと移り変わっていく展開に心が痛い……。それにしても、なんと面白いことか!→…

オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder

生きろ――生きろ――生きろ。 <子供工場>で思ったことが甦る。何を信じて生き抜くべきかも分からずに。すがりつくべきものを見つけられないまま。怒りとは違った闇雲さで、強く、それを思った。 そして、今の妙に心地よいあったかさに身を委ね、ずびーーーー…

スプライトシュピーゲル? いかづちの日と自由の朝

「よせ……帰還するんだ。現時点で転送支援が可能なのは、君たちの羽だけなのだぞ」 「それで十分です」 鳳 二人を見つめて/にこりと微笑。 「行きましょう、乙さん、雛さん。あたくしたちはみな、何があろうとも、決して屈せず、失墜したりしないと示すために…

ばいばい、アース (1) 理由の少女

「卒業する者に、師についての記憶は必要ない。ただその教えが、生きてさえ入ればいい。それに、その方が、教えることの下心が知れずに済むのでな」 「下心……?」 「託すのさ。俺には辿り着けないと判っている処に、行って貰うために」 自分探しの旅から始ま…

スプライトシュピーゲル 2 Seven Angels Coming

「君の正義と不屈さは、その武装のお陰かね」 「銃に心を委ねたことは一度もありません」 屹然とはねのける。 「あたくしの正義は要撃です。銃の前にあるもの、銃そのものに、心を委ねることは許されません。あたくしの背後にあって守られるべきものにのみ許…

オイレンシュピーゲル 弐 FRAGILE!!/壊れもの注意!!

もし涼月がいたら ― ?石油タンクなどものともせず敵の主力へ迫ってくれたはずだ。 もし夕霧がいたら ― ?涼月や自分が危機に陥れば十全にサポートしてくれたはずだ。 駄目だ。この部隊では満足に戦えない。 責任転嫁をする気もなければ、自分の間抜けさをご…

スプライトシュピーゲル I Butterfly & Dragonfly & Honeybee

「よく頑張ったわ」 静かに両手を開き、少年をゆっくり抱き寄せた。 「……泣いていいのよ」 少年の頭を抱えるようにして鳳が言った。 「泣いていいの」 「戦士は泣いたりしないって……父さんが言ってた。一番上の兄は、強くなくちゃいけないって、母さんが言っ…

オイレンシュピーゲル 壱 Black & Red & White

「そして重要なのは、プリンチップ社が現れた今、それに対抗する兵科が我々の手にあるということだ」 「……あの男が狼煙ってわけね。武器を与えられれば喜んで振り回す人間たちへの。自分たちが住む街への憎しみでいっぱいの人間たち……きっと何の疑いも抱かず…

マルドゥック・スクランブル The Third Exhaust―排気

「俺はただ、お前と―お前たちと、こうしていたかった」 ボイルドの言葉に胸が痛くなります → 感想

マルドゥック・スクランブル The Second Combustion―燃焼

「お前を手に入れることに、理由などない……」 ぼそりと呟き、ハンドルを握りなおした。 「俺はお前をこの手に取り戻さなければならない……」 失点を取り消すのだ。人生の失点―ボイルド自身のあらゆるフラッシュバックを消し去る。全力をかけて過去を無に帰し…

マルドゥック・スクランブル The First Compression―圧縮

「俺に指輪を届けてくれ。頼んだぞ」 シェルは言って、去っていった。 ボイルドは、カウンターに置かれたままの新聞の切り抜きを、静かに見つめ、 「これでまた、お前に会える。……ウフコック」 シェルには聞こえないところで、ぼそりと、呟いていた。 ボイル…

マルドゥック・ヴェロシティ 3

全ての感情が消えた後で、虚無が力となって満ちていた。 声 ― 今はもう何も聞こえない。いや、たった一つ生き残った真実の声がかすかに響く。 〝ハロー、モンスター〟 加速 ― ただ一人で。 自分の爆心地に向かって ― 迷わずに。 暗黒と失墜の完結編。大満足…

マルドゥック・ヴェロシティ 2

その名を口にしたとき、甘く灼けるような味を感じた気がした。 「俺が、お前の願いを叶えてやることは不可能だろう。だがそれを妨げるものを取り除くことはできる。それが、お前に対する、俺の有用性だ」 バックミラー越しの会話。 「やつらの角をへし折って…

マルドゥック・ヴェロシティ 1

「ウフコック、ラナと一緒にいてくれ」 「でも、ボイルド……俺も一緒に……」 「大丈夫だ。すぐに戻る」 ウフコックが渋々とラナの肩に移動した。 「ボイルド……すまない、俺のせいで……」 「お前が謝ることはない」 ボイルドは言った。穏やかに ― もう何の演技も…

ストーム・ブリング・ワールド2 星を輝かせる者―カルドセプト創伝

謝りながらも、リェロンは、うっすらと微笑んでいる。 そしてその顔のまま、リェロンは言った。 「やっぱり、守る相手が、君で良かったなと思って」 アーティはまた、くしゃっと顔を歪め、ぽろぽろと涙を零した。 続きが読みたくなるボーイ・ミーツ・ガール →…

ストーム・ブリング・ワールド1 星の降る都市―カルドセプト創伝

「良いわよ。一緒に歩きたいんだったら、取りあえず、並んで歩きなさいよ」 「並んで……?」 「そうよ」 「それだと近すぎる」 リェロンが、きっぱりと言った。アーティの頬が、ひくっと引きつり―爆発した。 「がたがた言わずに、そうしなさいっ!」 はたして…

蒼穹のファフナー [amazon]

地球外知的生命体はいう。 あなたはそこにいますか? 思考を読み取る能力を持つ敵。圧倒的な力により、日本全土は壊滅的な打撃を受けた。 その日本にあった唯一の平和な孤島。だがある日、その平和が破られる事となる。 襲来した敵を倒すため、一騎は「ファ…

カオス・レギオン 0/1/2

久しぶりのファンタジィ。先日読んでお気に入りになったマルドゥック・スクランブルの著者の作品。黒印騎士ジークとかつての友、反逆者ドラクロワの戦い。なぜ友は反逆者となったのか、その理由を追い求め、ジークはドラクロワを追いかける。たったひとりの…

マルドゥック・スクランブル

全三巻のSF。 ある男性に買われた少女バロットが、事故を装って殺されそうになる。 そんな瀕死の少女を電子的技術によって助けた事件担当機関のドクターと ネズミ型万能兵器のウフコック。 男性の犯罪を証明するために、その三人が事件を追う。 というストー…