有川浩

県庁おもてなし課

「なぁ、いつか多紀ちゃんって呼んでいい?」 「いつかって、いつですか?」 「……もうちょっと俺がカッコよくなったら」 せめてもう少しあがいてから。 俺が憧れるあの人たちに、もっと恥ずかしくないようになってから。 「待ってますから、急いでください」…

シアター!(2)

「すごいな、君は」 ぽつりと呟く。 「声だけで俺を救っちゃうんだな」 男が男に惚れる、女が女に惚れる。そんな格好良さがある話でした。ってゆーか鉄血宰相かっこよすぎ。他のメンバーを中心に描きつつ、演劇にかける思いや、浮かび上がる恋などが、ほんと…

ストーリー・セラー

「でも、行っとこうかなって思うと必ず考えちゃうことがあるのね」 「聞きましょう」 「もしあたしがたまたまあなたの好きな作家じゃなかったら、あなたはあたしにこれほど興味を持ったかなって」 物語を書く人と読む人の出会いって、なんて素敵なんだろう。…

好き、だった。―はじめての失恋、七つの話―

「今思えば、俺の若い頃の失恋は、甘ったるかったなぁ。ただ行き違っただけ、タイミングが合わなかっただけ。きっと本当の失恋っていうのは……」 「人生が枯れて、恋そのものを失うこと」 「ほんと、俺なんて人間に恋したカバの気分だよ」 失恋ものということ…

キケン

「つうか、何やるときでも本気度はMAXなんだよなぁあの人たちは」 機械制御研究部略してキケンのお話なんだけど、機械あんま関係なく、いわば光画部で、鳥坂みたいな暴君部長に振り回されて「全力で遊ぶ」様がとても楽しい。こういう学生生活出来たら楽しか…

シアター!

「今日から俺が債権者でシアターフラッグが責務団体だ。今から二年で返せ。劇団が上げた収益しか認めない。返せなかったらシアターフラッグを潰せ」 全員が息を飲んだ。司はせいぜい意地悪く笑った。 「黒字が出せる劇団になるって話だったな。たった三百万…

植物図鑑

「根拠がそれだけじゃ早計じゃない?俺、一応男だよ」 「拾ってって言ったのそっちじゃない!」 さやかは駄々を捏ねるように叫んだ。 「拾っちゃったら情が移るじゃない。このまま出て行かれたら、それでもう二度と会えない人になったら寂しいって思っちゃっ…

三匹のおっさん

「まだまだおさんの箱に入っときたい俺としてはだ、暇な時間をただ流してちゃなまっていくだけだと思うわけだ。そこでよ」 重雄はニヤリと笑った。 「『三匹の悪ガキ』のなれの果ての『三匹のおっさん』どもでも、私設のボランティアでもやってみねぇか」 → …

別冊 図書館戦争(2)

「お前、そういうところはこの機会に徹底的に思い知れ。お前に苦手があることも弱いところがあることも悪いことじゃない。当たり前なんだよ。お前が有能なのは悪いことじゃない。だけどお前が飛びぬけて有能な奴じゃなくてもお前のことが好きな奴は好きだよ…

ラブコメ今昔

「相手の人たちはみんな正屋さんの携帯知ってるんでしょ。だったら番号変えるまでしなくちゃ意味ないし、そこまでココロ狭くなりたくないので取り敢えず努力。その代わり」 私の携帯番号、一番特別な場所に名前だけで登録してください。 面白いけど、甘さが…

別冊 図書館戦争(1)

「もっと先までしてみたいとか思ったりしないのー?」 「思わない……ことはない、んだけど……」 郁はヤケクソでまくし立てた。今さら柴崎相手にかく恥はない。 「経験値ないから怖い!以上!」 「そーか、純情乙女の純粋培養でその年までいくとそーゆう弊害が…

阪急電車

圭一は口をへの字にして美帆を睨み、人差し指で軽く美帆の額を弾いた。 「いたっ!何で!?」 おでこを抑える美帆から圭一はわざと目を逸らした。 外で、無造作に ― 思わず抱きしめたくなるようなこと言うからだよ。 駅から駅へといく、わずか数分の中に生ま…

図書館革命

「これを返すときに何か言う約束だったな。俺は約束を守ったぞ」 絶対、無事でいてください。たしかに堂上はその約束を守ったが……郁の顔は真っ赤になった。 い、今それを持ち出すか。 「そ、それは……もう言ったも同然なので」 「俺は約束を守った」 堂上はそ…

塩の街

「あーあ、怒ってんねえ。こりゃ一発ぐらいじゃ済まないかな」 「―― それくらい」 真奈は笑った。笑いながら、涙がいくらでも溢れてくる。 「それくらい、安いものでしょう?あたしたちの恋に、ただ乗りしたんだから!」 本編はばっさりカットでシャープに仕…

図書館危機

「階級章を決めるとき、意匠にカミツレを入れることを決めたのも司令だ。カミツレの花言葉って知ってるか」 「いえ」 郁の知ってるカモミール ― カミツレは、マーガレットににたかわいい白い花で、ハーブやアロマの定番。リンゴに似た甘い香りで、ハーブティ…

クジラの彼

「お、おおおおおお前という奴はっ!」 ジェットの音にまぎれて光稀が大声で怒鳴る。 「いきなり何てことを!」 「何をって。合意じゃなかったの」 「舌は予定に入ってないッ!!」 ベタ甘ラブロマに悶えるが良い!っていうか、悶えました。もう最高!→ 感想

レインツリーの国

「今までの彼女にも百発百中『理屈っぽい』で振られてるしな。ミサコさんともそうなるで。俺のほうも女の子が話題についてきてくれへんかったらもうええわってなってしまうし」 なぁんだ、とミサコはつまらなそうに呟いた。 「結局そのめんどくさい彼女のこ…

図書館内乱

「嘘よ、ごめん。あんたはそうだねとか言わなくていいわ、こんなこと。ちょっと意地悪言ってみたかっただけよ」 柴崎らしくないウェットさに却ってとまどう。 「あんた純粋すぎてたまにいじめたくなるのよ。でももしそれであんたが物分りのいい顔したら、あ…

Sweet Blue Age

「潜水艦乗りからすると世間の人って二種類に分かれるんだよね。潜水艦が『潜る』って言う人と『沈む』って言う人。素人さんは半々くらいの確率で『沈む』って言うんだけど、君は違うんだなって」 「え、だって」 付け足された説明で更に訳がわからない。 「…

図書館戦争

熱く笑える傑作。こんな世の中にならないことを願いつつ。 → 感想

海の底

年に数回市民に開放される横須賀基地。 春の桜祭りの中、停泊中の潜水艦「きりしお」へ送られた緊急命令。 「ただちに出航せよ」 まさか、襲撃? 命令どおり出航した直後、スクリューに何かが噛みこまれた。 動けなくなる船。 船を囲んでいる巨大なザリガニ…

塩の街[amazon][bk1]

ある日、巨大な結晶が宇宙から東京湾に降ってきた。その時から世界は塩に覆われ、人が塩化していく。防ぐ方法は未だない。そんな崩壊寸前の東京に住む男女が繰り広げる物語。 先日読んだ「空の中」があまりにも良かったので、慌てて著者の前作を購入&読了。…

空の中[amazon][bk1]

地上2万キロの世界。戦闘機ですら滅多に飛ばないこのエリアで起こったプロトタイプの飛行機「スワローテイル」の事故。何もない空間でいったい何が? 事故の原因がわからぬまま時が過ぎ、やがて同じ場所で航空自衛隊の機が事故にあう。共に飛んでいた唯一の…