海の底

年に数回市民に開放される横須賀基地
春の桜祭りの中、停泊中の潜水艦「きりしお」へ送られた緊急命令。
「ただちに出航せよ」
まさか、襲撃?
命令どおり出航した直後、スクリューに何かが噛みこまれた。
動けなくなる船。
船を囲んでいる巨大なザリガニのような甲殻類
そのハサミに囚われているのは、ぴくりともしない人間。
「食ってる・・・」
そんな孤立した「きりしお」に紛れ込んだ少年少女の行方は?
国は横須賀を守りきることができるか?


初っ端から一気に引きずり込まれたジェットコースターノベル。
そして、何度も泣かされることになる展開。


 「中の子供を食わせる気か!」 - 艦長の決断に。
 「あなた方にとっての正義の味方です」 - そう答えるしかない末路に。
 「がんばって!」 - そのメモに込められた気持ちに。
 「見届けろ。あの苦闘の上に自衛隊が出動することを胸に刻め」 - その屈辱を全うするプライドに。
 「もういいよな?」 - その涙に。


機動隊で勝負になるか。自衛隊は出動できるのか。
政治的要因。決断までの時間。
その間に戦った人たちすべてに拍手を送りたい。
前作の傑作「空の中(->感想)」に勝るとも劣らない傑作。
間違いなく本年度ベスト10入りする超オススメな作品。


海の底 - 有川浩