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おちゃらけ王

「理屈や正論は他人を黙らせるだろう。上手く組み上げれば組み上げるほどにな。だがその正しさは同時に、自分の気持ちをも黙らせる力を持っているのだ」 「何を急に―」 「そして、自分の組み上げた論理で自分の気持ちや誇りを押し殺す人間は、この上なく無様…

クシエルの啓示(3) 遙かなる道

「じゃあ、これでお別れなのね?あなたと私の?」 「そう、神娼の女王と流浪の民の王子の」 長い長い道のりの終わりに感動。とてもよかった。ほんとによかった。→ 感想

クシエルの啓示(2) 灼熱の聖地

「あたしは、怖かった」彼女はそれだけ言った。「すっかり震え上がり、やってみようともしなかった」 察してうなずいた。 「そうしていたら返り討ちにあうのがおちよ。さっきの取引を守るわ、賢女様。実はね、私たちには手持ちの切り札がもうひとつあるの。…

はたらく魔王さま!

「いいか、この日本で魔力も体力もない俺が手に入れられる唯一の力、それは正社員の肩書きだ!」 真奥は、エンテ・イスラを恐怖に陥れた悪魔の哄笑とともに、宣言した。 「いいか勇者エミリア、俺は、この世界で正社員になってみせるぜ」 「……そんなこと、私…

狼と香辛料(16) 太陽の金貨(下)

「じゃが、過去に囚われておるとどうなるか、ぬしは知らぬわけではないじゃろう?」 「それはそうだが……」 「じゃが、なんじゃ?」 「だが、過去に囚われていたせいでめぐりあえることもある」 最後まで山あり谷あり。ロレンスがホロに惚れてるのはわかって…

ミストクローク 霧の羽衣(3) 永遠の大地

「信念ってのは、まわりで何が起ころうと関係ない。誰かが見まもってくれるってことを人は信じられる。誰かがうまくいくようにしてくれるって信じられる」 セイズドは眉をひそめた。 「つまり、いつだって手段はあるってことだ」 緊迫した序盤から始まり、さ…

バカとテストと召喚獣(9)

「上等だ。テメェのこと、信じてやろうじゃねぇかクソッタレ……!」 何という熱い終盤!コミカルすぎて物足りなさがあった前半をカバーする盛り上がり方でした。男の子のこういうところって格好いいよね。→ 感想

封殺鬼 帝都万葉

「あんたが言うほど、俺の主は子供ではない」 「――」 「神島にとってふさわしいとは思わない。だが、あんたは桐子にとって必要な人間だ」 桐子が自覚していくお話は、とても楽しかった。ていうか、幽霊の音吉さんが素敵すぎて、どうしようかと思いました。置…

夢の上(2) 紅輝晶・黄輝晶

「復讐に身を焦がす貴方は壮絶なまでに美しかった」 本当に素晴らしい。一度物語りに入り込んだら戻ってきたくない、そんな思いになるほどのめり込みました。前作で語られた「翠輝晶」「蒼輝晶」ともリンクしながら、語られる物語に魅了されっぱなしでした。…

シアター!(2)

「すごいな、君は」 ぽつりと呟く。 「声だけで俺を救っちゃうんだな」 男が男に惚れる、女が女に惚れる。そんな格好良さがある話でした。ってゆーか鉄血宰相かっこよすぎ。他のメンバーを中心に描きつつ、演劇にかける思いや、浮かび上がる恋などが、ほんと…

とある飛空士への恋歌(5)

「クレアを取り戻したいんでしょ?」 「うん」 「その気持ちだけ持っていけばいいよ。その気持ちを世界中に伝えて。そうしたら絶対、世界が応えてくれるから」 じんわりじわりと目頭が熱くなる。胸の痛みを伴う別れと約束の笑顔の旅立ちを経て、辿り着いた世…

虐殺器官

「ではあなたは、ことばをどんなものとして見ているのですか。人間の現実を規定するものではないとしたら、ことばにはどんな意味があるんですか」 「もちろん、コミュニケーションのツール。いいえ、違うわね……器官、と呼ぶべきかしら」 静けさが胸を打つお…

スーパーヒーローの秘密 (株)魔法製作所

「はじめて言ったとき、かなり普通じゃない状況だったけど、でも本心だった。愛してる」 面白かったー!決して大きな力を持っているわけではないのに、魔法を悪用する人たちの目的を考えて、自分たちの力をいかに活用できるかを工夫して、つまりは普通の仕事…

午前零時のサンドリヨン

酉乃初はマジシャンで、そして魔法使いだ。 僕は彼女に抱いていた偽物の気持ちを、そっと破り捨てた。 だって、これから彼女に恋をしても、べつに遅くないじゃないか。 面白かったー。日常の謎は、興味深くもちょっとビターなところがあったけど、魔法使いの…

折れた竜骨

「たとえば、騎士が馬を下りた後、当然のように馬の世話をするように。修道士が鐘の音を聞き、当然に礼拝堂で祈りを捧げるように。農夫が秋を迎え、当然に実りを穫り入れるように。<強いられた心情>の犠牲者である<走狐>は、自分の役割として、己の知識…

サクラダリセット(4) GOODBYE is not EASY WORD to SAY

「それでは私は、ケイとアイスクリームを食べてきます」 「うん。あーん、ってしてあげてね」 春埼は頷く。 「わかりました」 「え、ホントにするの?」 「お見舞いとは、そういうものではないのですか?」 これは素晴らしい。どのお話も魅力あふれる描写に…

火の国、風の国物語(11) 王都動乱

「必ず、迎えに来ます!必ず!」 面白かったー。フィリップ、ジェレイド双方に大きな見せ場があって、策士っぷりに驚き、無双っぷりにドキドキだった。でもやっぱりアレスがいないとね!束の間の再会が切ないけれど「約束」があればきっと大丈夫と信じてる。…

氷雪王の求婚 〜春にとけゆくものの名は〜

「何が云いたい。そなたの話はいつも要領を得ん」 訝しげにアイリスを見遣る。彼女はどんと自分の胸を叩いた。 「もし陛下が失業されても、陛下お一人の食い扶持くらい私が何とかしてみますわ。陛下はゆっくりと<皇帝>以外の『なりたいもの』をお考え下さ…

猫物語(白)

「ねえ、羽川さん」 戦場ヶ原さんが私の目を見つめたままで言う。 それは少しだけ。 昔みたいな ― 平坦な口調だった。 「あなた本当に阿良々木くんのこと好きだったの?」 そして重ねて問う。 「今でも阿良々木くんが好きだって、もっかい言える?」 羽川の…

銀の海 金の大地(11)

「やつは死ぬしかない。おまえがやつのものになれない限り、やつを死なせてやるしかないんだ、真秀。だれのせいでもない、同母の妹姫に恋をした、やつの罪だ!」 なんてところで終わるんだ……続きを読めないことが残念でなりません。→ 感想

銀の海 金の大地(10)

「何を考えているんだ。どういうつもりなんだ。今日という今日ははっきりさせろ」 「わたしが考えているのは、速穂児。佐保彦の王子を裏切ることだ」 速穂児が息をのんだ。穂波は笑って、いいなおした。 「王子を裏切ってでも、手に入れるべき滅びの子の、死…

毒吐姫と星の石

「……ねぇあたし、どこまで」 そして唇を奮わせながら、血を吐くように言った。 「あたし、あいつらに、どこまで道具と思われているの?」 毒のような言葉で身を守ってきた少女が、異形の王子との出会いから変わっていく。その信頼が素敵だった。そして、懐か…

夏光

「これは一生に一度しか出来ない強い願掛け……ううん、呪いね」 鶴乃さんは長い首を多少右に傾け、キミを見た。 「百の焔の厄返しっていうのよ」 いじめだったり、妬みだったり、嫌悪だったり、人の嫌なところが見えたり、時に背筋がぞくぞくするような怖さを…

銀の海 金の大地(4)

「おまえ、あの王子が好きか」 真秀は目を見ひらいた。その言葉ははじめて聞いた言葉のようにうつくしく、耳に、心に染みこんできたのだ。 刺青の男は、唇のはしをゆがめて笑った。 「よしたほうがいい。それは禍つ恋だ。一族を滅ぼし、いのちを奪う恋だ」 …

薔薇のマリア(3) 荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐

「信じてくれなくても良いけど、僕にもわかるんだ。何で自分は生きてるんだって思う気持ちは、わかる。だから、僕のことを責めてくれてもいい。僕を恨むなら恨んでもいい。でも、自分を殺さないでよ。自分が生きてることは、認めて、許してあげて欲しい」 す…

クシエルの使徒(3) 罪人たちの迷宮

「前にも言ったかしら」と、ささやく。「愛してる、って?」 「ああ、聞いた」ささやき返してキスする。 「だが、何度聞いても飽きないね」 面白かった!ハラハラどきどきでページをめくる手がもどかしいほどだったけど、やっぱりハッピーエンドじゃないとね…

夢の上(1) 翠輝晶・蒼輝晶

「じゃ、最後に一言だけ。ケナファ騎士団の副団長としてではなく、貴方の友人として言わせて貰います」 俺は夢なんか見ない。だから 「イズガータ、俺を失望させるなよ?」 鮮輝晶に封じられた夢を、己が見た夢として再現する「夢利き」が、夜の王に夢の物語…

神の棘(2)

「親父は形式だらけのカトリックを馬鹿にしていたが、あのときばかりは秘蹟に神を感じたと言ってた。怯えて泣いている子供には何を言うよりもただ抱きしめてやったほうがいい。それと同じだ。神の赦しだかなんだかわからんが、ただ行為そのものが、あんなに…

今朝の春 ― みをつくし料理帖

「勝負事ってのは厄介でねぇ、どれほど努力したとか精進したとか言っても負ければそれまで。勝負に出る以上は勝たなきゃいけない。そう思うのが当たり前ですよ」 ただ、と、りうは言葉を切った。 「勝ちたい一心で精進を重ねるのと、無心に精進を重ねた結果…

クシエルの使徒(2) 白鳥の女王

足下の地面が割れでもしたように、呆然と立ちすくむばかりだった。 はっと事態を悟ったときには遅すぎた。 はめられた。そもそもの初めから、まんまとあちらの策にはまっていたのだ。 ジョスランとのやり取りが痛くてもどかしくてしょうがなかったんですが、…