支倉凍砂

狼と香辛料(17) Epilogue

「でも、だからこそあの二人が、まさかきちんと式を挙げるだなんてちょっと意外だったかな」 末長くお幸せに。→ 感想

狼と香辛料(16) 太陽の金貨(下)

「じゃが、過去に囚われておるとどうなるか、ぬしは知らぬわけではないじゃろう?」 「それはそうだが……」 「じゃが、なんじゃ?」 「だが、過去に囚われていたせいでめぐりあえることもある」 最後まで山あり谷あり。ロレンスがホロに惚れてるのはわかって…

狼と香辛料(15) 太陽の金貨(上)

「わっちのために情報を集めるなんて言い訳しておらんで、雄らしく勝負に行ったらどうじゃ」 ホロは腰に手を当てて、にっと歯を剥いてこう付け加えた。 「仮に例の商会がおおたわけで町が寂れ店がつぶれても、また二人旅なら楽しいじゃろ?」 最終章の始まり…

狼と香辛料(14)

「あなた方は私たちの村で奇跡を起こして私たちを救ってくれました。そのあなた方が」 エルサは言葉を飲み込み、それは同時に涙を飲み込んだようにも見えた。 「そのあたな方が奇跡で救われないのだとしたら、どうして私は神の教えを人に説けるのですか?」 …

狼と香辛料(13) Side Color 3

「うまいものを食いたければ倍の金を。もっと満足したければ倍の量を。さらに喜びを倍にするにはどうすればいいか?」 ホロが豚の丸焼きを見てロレンスに向けた謎かけ。ロレンスは、笑って言葉を続けていた。 「共に食べる相手を増やせばいい。お前がうまそ…

狼と香辛料(12)

「わっちゃあこの先も長いこと生きていかねばならぬ。寒い中眠るには、言い訳という懐炉が必要じゃ。ずっと、それを抱いて眠り、時折起きては、眺めるに足る、の」 その台詞に笑顔を返すのは至難の業だろう。それでも笑わずにはいられなかった。 これから世…

狼と香辛料(11) Side Colors2

「これで、お前の笑顔はずっと忘れないだろうな」 旅の間に繰り広げる二人の他愛もないやり取りにニヤニヤしっぱなし!ホロもロレンスも可愛いったらないな。シリアス方面ではエーブが商人として立ち上がるお話があった。甘さの残っていた没落貴族の娘が、商…

狼と香辛料(10)

小さくうなずいたホロは、いつもと逆の立ち位置だ。ロレンスの弱さを許容するように、告解する信徒に許しを与える司祭のように、ホロはロレンスの頭の上に手を載せている。 ただ、本当に謝りたそうなのは、むしろホロのほうだった。 「謝るなよ。謝ったら、…

狼と香辛料 9 対立の町 下

そう、面白かった。面白かったのだ。 ずっと同じ行商路を、馬の尻を眺めながらぐるぐる回っているだけの旅ではなかった。 泥をすすり地を這いずり回り、それでも積荷を次の町に全て運びきるのが行商人のはず。 積荷は決して落としてはならない。 どんな困難…

狼と香辛料 8 対立の町 上

「くふ」 ホロは笑って、それから一度こちらにしがみついてきた。 「おい、またコルを使ってからかう、つもり……?」 ロレンスの言葉は、そのまま消えてしまった。 「人は強く、強い者は後ろを顧みぬ。わっちゃあ長いこと顧みられなかった。もうそれは嫌なん…

狼と香辛料 7 Side Colors

「む……眩暈が……」 そんな都合よく眩暈が起きるわけがないのに、そう言われてふらりとコップを落としそうになれば、手を差し伸べずにはいられないお人好しの連れだ。 しなだれかかるようにその腕に体を預け、ここぞとばかりの上目遣いでこう言った。 「早くし…

狼と香辛料 6

「ぬしの優しさは怖い怖い」 首をすくめて楽しそうに笑うホロの口元から、白い吐息が後ろに流れていく。その小悪魔のような様に尻尾の毛をむしりたくなったとしても、仕方のないことだろう。 しかし、川の上のこの寒さだ。ホロの尻尾を失うわけにはいかない…

狼と香辛料 5

「わっちはだいぶぬしにわがままを言ってきた。たまにはぬしがわがまま言ってくりゃれ。それでぬしがわっちのことを忘れるようなら……」 ロレンスはすぐさまそれはないと言おうとしたが、ホロのしたいことに気がついて言葉を飲んだ。 「後ろから喰らいつくま…

狼と香辛料 4

か細く、呟くようなホロの声。 ロレンスは、見え透いたやり取りを大事にしながら、小さく言った。 「どうしたい」 こく、とホロはうなずいて、答える。 「甘えても……いいかや」 ここだけ抜き出すと、なんだかアレですね。 → 感想

狼と香辛料Ⅲ

その言葉に対しどんな顔をすればいいのかわからない。怒ればいいのか、笑えばいいのか。いや、無視するのが一番だと気がついた時には、ホロが心底楽しそうに笑っていた。 「ぬしの可愛い顔が見れたから、今日一日くらい一人でも大丈夫じゃな」 からからと笑…

狼と香辛料Ⅱ

「それともなにかや、隣にいて欲しいのかや?」 慌てずに、予行演習を思い出した。 「ああ、いて欲しいな」 「寒いから嫌じゃ」 即答で言い返し頭を引っ込めると、毛布からはみ出している毛布よりも温かそうなホロの尻尾が嬉しそうに揺れる。 一人旅では絶対…

狼と香辛料

第12回電撃小説大賞の中でもっとも好みな銀賞受賞作 → 感想