紅玉いづき

ようこそ、古城ホテルへ 湖のほとりの少女たち

「ここは古城ホテル『マルグリット』。あなたがたは、この古城ホテルの女主人と鳴るために迎えられました。……この城に残るものは生まれは問いません」 「女主人となれるのは、あなたかたの中でただひとり。あなたがたには、女主人となるため、私の審査を受け…

19―ナインティーン

「だけど、俺たち、半年後には……」 「それでもいいの」 ユキは断言した。 「だけどもいいの」 入間さんのゾクっとラブにニヤニヤして、綾崎さんの罵しられ青春にクスリ、紅玉さんの怠惰巫女受験物語に涙ぐんだり。→ 感想

毒吐姫と星の石

「……ねぇあたし、どこまで」 そして唇を奮わせながら、血を吐くように言った。 「あたし、あいつらに、どこまで道具と思われているの?」 毒のような言葉で身を守ってきた少女が、異形の王子との出会いから変わっていく。その信頼が素敵だった。そして、懐か…

ガーデン・ロスト

「はじめて思った。ちゃんと、あたしのことちゃんと、好きになって欲しい」 そこまでいって、音が立つように首を落とした。ぜんまいの切れてしまった人形のようで、頼りない動きに、呟く言葉も心細かった。 「でも、―怖い」 かわいくて、お人好して、格好よ…

雪蟷螂

「けれど、訂正を願いたい。貴方が思い出させてくれた」 笑うことのない雪蟷螂の族長のぎこちない笑みは、白い花が静かにほころぶようだった。 「たった一度だけだが……私も、確かに、この心を灼いたことはある」 人喰い三部作の最後を語るお話は、凍てつくよ…

MAMA

「サルバドール・トト、の菜に、おいて……使い魔<ホーイチ>に、命じ、ます」 「聞こう」 「トトが、眠る時には、手を、繋いでいて」 「は?」 「手を繋いで。『おやすみなさい』と言って。そして、目が覚めたら『おはよう』と言って」 厳しく切なく、でも優…

ミミズクと夜の王

嬉しかった。 嬉しかったの。 あなたは何もしてくれなかったけれど。 あたしの話を聞いてくれた。 冷たい目で、お月様みたいに綺麗な目で、ミミズクのことを見てくれた。 あなたのその目にあたしがいたことで。 初めて自分が、生きていることを知ったのです…