西尾維新

花物語

「やらずに後悔するほうがいいに決まってる」 「そうだな。私もそう思う。やって後悔するほうがいいなんてことを言うのは、『やってしまった後悔』の味を知らない、無責任な第三者の台詞だ」 だけど、と私は言う。 「だけど ― 一番いいのは、やって後悔しな…

傾物語

「お前様は十一年後、あの娘と会えなくなるということじゃぞ?」 「……」 「あの母の日にあの娘と出会うことはなく、その後の楽しいお喋りも、雑談も、すべてがなかったことになってしまうということじゃぞ。それをお前様――ちゃんとわかっておるのか?」 まさ…

猫物語(白)

「ねえ、羽川さん」 戦場ヶ原さんが私の目を見つめたままで言う。 それは少しだけ。 昔みたいな ― 平坦な口調だった。 「あなた本当に阿良々木くんのこと好きだったの?」 そして重ねて問う。 「今でも阿良々木くんが好きだって、もっかい言える?」 羽川の…

猫物語(黒)

「駄目だ。僕はやっぱり―羽川のことが好きだ」 言葉にせずにはいられない。 形にせずにいられない。 「好き過ぎて、とてもじゃねえけど触れねえ」 なぜ恋だと思わなかったんだろう……羽川家の事情もさることながら、確かにあったであろう思いが、辿り着かなか…

零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係

「ふざけんな!だったら心はどこにあるんだよ!」 「決まってんじゃねえか」 哀川潤は。 にやりと得意げに微笑し、その質問に答えた。 「心ってのは、それぞれの心の中にあるんだよ」 京都連続殺人事件の裏側を巡る物語……だけど、うーん。いーちゃん関係なく…

零崎人識の人間関係 零崎双識との関係

(しかし『私達六人』ってことは、こんな奴があと五人にて、しかもそいつらがこぞって兄貴を狙ってやがるってのかよ) 冗談じゃねえぜ。 助けに行かなきゃじゃねーかよ。 呪い名六名の裏切同盟VSマインドレンデル……と見せかけたお話。これまでの経験があった…

零崎人識の人間関係 無桐伊織との関係

「まあ、場合によっちゃあ生涯無敗の男と、およそ二割の力でやり合わなきゃいけなくなるんでな。これもなんかの巡り合わせだろ。お前らに協力してもらうわ」 人類最強と零崎兄妹、崩子ちゃんで、生涯無敗と戦うお話。めっちゃ楽しく、痛快だった。人識と伊織…

零崎人識の人間関係 匂宮出夢との関係

最初は敵だった。 途中、色々あって。 友達のようであって。 恋人のようであって。 一瞬だけ、家族のようでさえあって。 そして最後は―敵だった。 もしあの言葉がなかったら……そう思わずにいられない切ない恋の物語でした。→ 感想

偽物語(下)

「うおっ!なんで僕、歯ァ磨いたりしたげながら、実の妹を慈愛顔でベッドに押し倒してるんだ!?」 「ええええーっ!なんであたし、実の妹の服を着て実の兄からうっとり顔でベッドに押し倒されてるんだよおっ!」 「びっくりしたーっ!」 「びっくりしたーっ!…

不気味で素朴な囲われたきみとぼくの壊れた世界

串中弔士。 彼は誰よりも危険人物だった。誰よりもリスキーだった。 串中先生は何もしないのだ。 掛け値なく、誇張なく。本当に、何もしない。 その代わり、人に何かをさせるのだ。 うーん、イマイチだった。ちょっと地の文がくどくて。 → 感想

偽物語

「おかしいな……お前と僕は共に数々の冒険をし、死地をかいくぐってきているはずなのに」 「それがどうしたんですか」 「吊り橋効果って知ってる?」 「ああ、吊り橋の上でふたりっきりになると、別に嫌いじゃない相手でもつい突き落としたくなるっていう例の…

きみとぼくが壊した世界

「昔、上から目線の褒め言葉シリーズというのを考えたことがある」 「聞いてみたいな」 「『この小説は面白いよ。僕も子供の頃、よくこんなものを書いたものだ』」 「上からだね!」 「『デビュー作でこれだけ書ければ上等だよ。三年後にはいい小説を書いて…

傷物語

「いや、お前にできることはある」 僕は、羽川の顔をじっと見つめて、言った。 しっかりと見つめて、言った。 「待っててくれ」 「……」 「新学期、あの学校で。僕のことを待っててくれ」 羽川さん最高!ひたぎという存在がいなかったら、全力で応援するとこ…

零崎曲識の人間人間

「ひょっとして、双識さんも働いてたりしたのでしょうか?」 「いや、あいつにはとんでもねえレベルで金持ちな友達がいてな。あんなビジネスマンみたいな格好をしてはいたが、基本的には遊び人だ」 「羨ましい生活です」 「まあ、そういう例外を除けば、そり…

刀語 第十二話 炎刀・銃

「で、でも、それじゃあ――」 七花は思ったことを。それこそ、そのまま口にする。 「結局、一番傷ついてるのは、あんたじゃないか」 「そうだよ?」 とがめは――何ということもなさそうに、そう頷いた。 「そうでなければ、奇策など練られない」 おー、まさか…

刀語 第十一話 毒刀・鍍(メッキ)

不意にとがめが、七花へ手を伸ばした。ん、と七花が首を傾げると、とがめは不快そうに眉を顰めて、 「何をしておるか、このたわけが」 という。 「腹心は歩くとき、あるじと手を繋ぐものだ」 「?そうなのか?左右田右衛門左衛門と否定姫はそんなこと、して…

不気味で素朴な囲われた世界

「それでも、やっぱり不自然すぎるんだよね ― みんな、あまりにも簡単に人を殺しすぎている。これがミステリー小説だったらわかるんだ……ミステリー小説というのは、人が死ぬ、被害者が殺される、犯人が殺す ― 殺人事件が起こることが前提なのだから、そこは…

刀語 第九話 王刀・鋸 (ノコギリ)

「忘れておけって……、でも、そんな気になることを言われたら……」 「それとも、なにか」 とがめは笑う。とてもいやらしい笑い方だった。 「また忘れさせて欲しいという、おねだりのつもりか?」 いやあ、面白かった。ここにきて、いい盛り上がり方してます。→…

トリプルプレイ助悪郎

「日本探偵倶楽部なんて言っても、所詮僕はしがない第三班 ― ここで場を締めるに足るような決め台詞なんて持ち合わせてないゆえに、その質問に対してただ素直にただ単純に答えるしかない自分がもどかしい限りですが ― ええ」 海藤は、確信的に頷いた。 「全…

刀語 第八話 微刀・釵 (カンザシ)

「い、いや、でも……相手といってもこの場合、その相手は意思を持たない人形なんだぜ?」 「変わらぬ」 笑みを消し。とがめは言った。 「人間であろうと人形であろうと― どういう状況であろうとどういう状況でなかろうと― わたしはあくまでも奇策のみで切り抜…

刀語 第七話 悪刀・鐚

「……たわけが」 とがめは ― そう呟いて。 それから、少しだけ、笑った。 「これも一度しか言わんから、よく聞いておけ。半年前ならいざ知らず ― 今はわたしは、わたしの刀はそなたしかおらんと思っておるわ。一度や二度負けたところで、それは変わらん」 → …

刀語 第六話 双刀・鎚

「残念ながらあまりのんびりもしておれんのよ。……そなた、先月真庭鳳凰が言っておったことを覚えておるか?」 「ん?『ちぇりお』が『ちぇすと』の間違いだってことか?」 「ちぇりお!」 続編が待ちきれなくなる終わり方でした。やばいやばい。早く7月にな…

刀語 第五話 賊刀・鎧

「なんだか、無性にとがめに意地悪をしたくなる……」 「いや、これはもう暴力だ!そたなは今わたしを蹴った!」 「なんだよー、とがめだってよくおれのことどつくじゃねえか。お互いさまじゃん」 「ぬう……なんだ、えらく反抗的だな……」 ついに「ちぇりお」が…

刀語 第四話 薄刀・針

どうしたものかしら、と七実は首を傾げ。 それから、海の向こうをゆっくりと見遣る。 深い深い、ため息。 どこまでもため息がよく似合う。 そして彼女は呟いた。 邪悪な微笑と共に。 「やっぱり、わたしも混ぜてもらおうかな。刀集め」 まさか、こうくるとは…

新本格魔法少女りすか 3

「りすかちゃん……落ち着いて。タカくんは、私達のことを思って―」 「笑わせるって言ってるのが、それなの」りすかは、ツナギの言葉に、本当に笑って見せた。馬鹿にしたように、思い切り、笑って見せた。 「わたし達のためだなんて ― わたしを負ける理由なん…

刀語 第三話 千刀・鎩(ツルギ)

七花が目を覚ますと、すぐ側にとがめがいた。その後ろに敦賀迷彩がいる。 どうやら交渉は終わったらしい。 「どうだった?」 七花は素直に訊いた。 残念ながら、と、とがめは憮然として答えた。 「最悪の結果だ」 千人の巫女が!!と思ったら、わりとシリア…

刀語 第二話 斬刀・鈍

そんなわけで、鑢七花の口癖が決定した。 「やれやれ、そなたの好みがうるさいせいで、思いの外、長話になってしまったな。とはいえ、まだ急がなければならないほどではない。この調子なら、夕方ごろには、目的地に着くであろう」 「ああ。ただしその頃には…

刀語 第一話 絶刀・鉋

とりあえず? まずは? なんだろう、その ― これから先があるかのような物言いは ― 確かな未来を約束するような口ぶりは。 まだまだ序盤だけど、面白くなりそうな予感。12ヶ月連続で買います。 → 感想

化物語 下

「じゃあまた連絡する」 「ああ、阿良々木くん。一つだけ、いいかしら」 「なんだよ」 「ツンデレサービス」 最後に、戦場ヶ原は言った。平坦な口調で。 「勘違いしないでよね。別に阿良々木くんのことが心配なわけじゃないんだから ― でも、帰ってこなかっ…

化物語 上

「バスガス爆発、バスガス爆発、バスガス爆発」 言えちゃった。 「夢を食べる動物は?」 いつの間にか十回クイズになっていた。 「……バク?」 「ぶぶー。外れですっ」 したり顔で言う八九寺。 「夢を食べる動物。それは……」 にやりと不敵に笑って。 「……人間…