十文字青

薔薇のマリア(16) さよならはいわない

「大事にしてくれ」 「気をつけるわ」 「大事にさせてくれ」 「……そんなこと言われて、拒めるわけ、ないじゃない」 「拒まなくていい。拒ませはしない。うなずく以外の返事はいらない」 まさに最後の戦いと言わんばかりの戦争模様にドキドキ。思いを告げる者…

薔薇のマリア(15) 愛も憎しみも絶望も

「あなたが」ハニーメリーは全身を震わせていた。「……あたしの、お父さんを……殺したの?」 「あなたもあたくしに殺されるのです。悪く思ってくれてもかまいません」女は愉快そうに眼を細めた。 「慣れているわ」 新キャラ登場して、危険区域に足を踏み入れた…

薔薇のマリア(14) さまよい恋する欠片の断章

「お前たちのおかげで、俺は何もかも手に入れた。俺にとっての世界ってものが何なのか、ようやくわかったんだ。俺は何一つ捨てるつもりはない。だから、俺を信じろ」 「うん」 「守らんとな」 目を開けると、黄玉の瞳に自分の顔が映っていた。 「守ってみせ…

薔薇のマリア Ver5 つぼみのコロナ2

だから、お前を笑わせてやりたいんだ。今日できなかったら、明日、それが無理なら、あさって、しあさって、その次の日でもいい。いい方法なんて思いつかないけれど、きっとなんとかする。 そのために、飯を食おう。腹を一杯にしよう。寝て、起きて、お前を一…

薔薇のマリア(13) 罪と悪よ哀しみに沈め

「琺瑠副長に伝えてくれ」 「何と、お伝えすればいいでしょうか」 「おれは……」彼は、ふ、と小さく笑った。「 私は大丈夫だ。また立ち上がる。君は行け。君らしく、まっすぐに。そう伝えてくれ」 届きそうで届かないもどかしさと、あとちょっとと思った後の…

薔薇のマリア(12) 夜に乱雲花々乱れ

「焦ることはない。今は自分に何が出来るかよりも、何がしたいかを考えるんだ」 「何が、したいか……?」 「そうだ。進む方向をまっすぐ見て、ただ一歩一歩、歩いていけばいい」 中盤ぐらいまでいろいろニヤニヤしてたら、なんてこと!なんてこと!!ムカつく…

薔薇のマリア(11) 灰被りのルーシー

「ぼくにも、何か見つかるかな」 「たぶん、見つからない」 雨にぬれた彼女の笑い顔はやっぱりきれいだった。 「転がっているのは、がらくたばかり。拾い上げて、丁寧に磨いて、大切にしないと、どれもこれも、がらくたばかり。ここでは何も見つからない。自…

薔薇のマリア Ver4 hysteric youth

やっぱり、やだよ。 今さら一人きりなんて。 みんなに会えないなんて。 「……あー、もう……」 恥ずかしいやつだ、僕ってば。 マリアがZOO入りした直後の短編集。何かと拗ねるマリアが懐かしいな。いじけながらもカタリの扱いはアレなので楽しい。個人的にはピ…

薔薇のマリア(10) 黒と白の果て

アジアンが足を止めた。マリアローズは前を向いたままだ。アジアンがこちらを見ているのかどうかわからない。どっちでもよかった。声が聞こえてさえいればいい。 「絶対、勝つから」 会わせてあげたいよ。 きみのことを大好きな、大事なきみの仲間たちに。 …

薔薇のマリア(9) さよならの行き着く場所

てゆうか、ショックなのはわかるけど、きみ、頭領なんじゃないの、昼飯時の。仲間が行方不明になっちゃったとか、かなりの緊急事態なわけだから。頭領が一番しっかりしないといけないはずなのに、符抜けてる場合じゃないのに、何なんだよ、そのざまは。 やめ…

薔薇のマリア(8) ただ祈り願え儚きさだめたちよ

キミはボクの仲間で、まるで兄みたいで、大切な友だちということさえ、口では言えなくても、ボクはそう思っているということさえ、ボクは言えなかった。 いつでも言えたはずだった。 言う機会はいくらでもあった。 それなのに、もう言えないんだ。 初めは過…

薔薇のマリア Ver3 君在りし日の夢はつかの間に

「あんただけよ」 だから、秘密よ、と言ったら、あいつは事もなげにうなずくだろう。 だから、特別よ、と言ったら、あいつはいったいどうするだろう。 昼食時(ランチタイム)のメンバーは、アジアン大好きだな!微笑ましかったり、見守る温かい視線を感じた…

薔薇のマリア(7) SINBREAKER MAXPAIN

もしダメだったら、どうしよう。 どれほどの痛手だろう。 そのとき僕は立っていられるだろうか。思わずへたりこんでしまったら、また立ち上がれるだろうか。 わずかな希望を元に一丸となって敵陣に潜入していくZOOが、ときおり振り返らせる思いにグッとなる…

薔薇のマリア(6) BLOODRED SINGROOVE

ZOOに入って、僕はようやく見つけることができた。 信じる強さを。 それは、きみが持っている強さにはとうてい及ばないに違いない。 でも、僕のなかにもあったんだ。 小さな、本当に小さな勇気と、ほんのちょっとの強さが。 そのことに、気づかせてくれた。 …

薔薇のマリア(5) SEASIDE BLOODEDGE

「老いぼれは下がってろ」 パンカロ・ファミリーの首領に向かってそんなことを言い放つことが出来る者は、彼だけだ。 ジャン・ジャック・ド・ジョーカー。 年の離れたえがたい友人の後ろ姿を見送りながら、親父がなかば呆然とつぶやいた。 「……あんたはまさ…

薔薇のマリア Ver2 この歌よ届けとばかりに僕らは歌っていた

砂漠だった。 見渡すかぎりの風景が、 ひび割れたこの心が、世界全体が。 乾ききった砂の海にひっそりと咲く花だった。 あなたが、あなただけが。 ZOOメンバーそれぞれの過去話。みんな不器用で、まっすぐで、ぶつかる壁に打ちのめされて。切ない話ばかりだ…

薔薇のマリア Ver1 つぼみのコロナ

「こいつはいい剣だ」 レニィは剣を鞘に納めて、コロナに押しつけた。 「誰がなんと言おうと、お前がそう信じるなら、俺も信じてやるよ」 騒動を起こすけれど、常に明るいコロナの過去は、とても胸に痛かった。面倒だと思い、それでも傍に居続けるレニィの姿…

薔薇のマリア(4) LOVE'N'KILL

僕は、無力で。 役に立たなくて。 所詮、みそっかすだから。 そんな、僕を。 「くっ!乱戦になったら、いくらボクでも……!マリア、いったん逃げるョ……!」 僕を、抱えて走っている。 僕を、守ろうとしている、なんて。 バカだ。 面白かった!圧倒的な力を誇…

薔薇のマリア(3) 荒ぶる者どもに吹き荒れろ嵐

「信じてくれなくても良いけど、僕にもわかるんだ。何で自分は生きてるんだって思う気持ちは、わかる。だから、僕のことを責めてくれてもいい。僕を恨むなら恨んでもいい。でも、自分を殺さないでよ。自分が生きてることは、認めて、許してあげて欲しい」 す…

薔薇のマリア(2) 壊れそうなきみを胸に抱いて

「あれがキミでなければ、助けたりしなかった。キミだからだ。キミだから……!」 アジアンは一瞬、声を荒げかけて言葉を呑み込み、目を伏せた。 「キミを見捨てることなんてできなかった」 これはなんと悲哀の物語なんだろう。孤独だったマリアローズが仲間を…

薔薇のマリア(1) 夢追い女王は永遠に眠れ

「仲間って、そういうものでしょ?たぶん、さ」 これまで、生きる伸びること、逃げることを真っ先に考えていたマリアロースが、仲間を信じて、時に先陣をきり、安心させるために笑顔を見せて、守るために無様な姿を見せてでも戦う。ああもう、こんなマリアロ…

薔薇のマリア Ver0 僕の蹉跌と再生の日々

一人で生きてゆくのは、つらいから。 その気持ちはわかる。 確かに、楽じゃない。楽じゃないとも。 けれども、誰かと寄り添っているのだって、結構、つらい。 これは心痛くなるお話だなあ。一人で生きてきたことが足かせとなっていく悪循環が辛かった。それ…

ANGEL+DIVE CODEX(3) CLOSERS

あたしは死なない。 少なくとも、どうすれば死ぬのか、あたしにはわからない。 死なないあたしに終わりなんてあるのだろうか。 ANGEL DIVEが個々へもたらす影響に胸が痛む。普通の人ではなくなったという思いが、一歩引いたり、逆に突き抜けてしまったりしち…

いつも心に剣を(3)

「君の父上のことについては、いつか話そう。今はまだそのときではない」 「なんで今はだめなの?」 「君がその手に剣を握ったからだ」 思い合ってるのに、ぎこちなくなる展開がもどかしい。そのまま離れてしまうことがとても辛いけど……レーレは大丈夫かしら…

ぷりるん。―特殊相対性幸福論序説

「最後に」 彼女は顔を上げた。 「一度だけ」 そうして、ぼくをまっすぐ見た。 すがるように、ぼくを見つめた。 「キス、してください」 だんだんと崩壊していく様がやばい。この追い詰められ方は感情移入していると自分までやられてしまいそうになる。それ…

ANGEL+DIVE CODEX(2) NIGHTMARE

工藤は違った。 俺たち。 そう言った。 すずは笑ってしまいそうになった。どうでもいい、そんなこと。よくないのかもしれないけど、こんなときに考えるようなことじゃない。今は足を動かせ。走れ。走りつづけろ。そうしてどこかにたどりついたら、知ることが…

いつも心に剣を(2)

そのころ彼女はまだヘルガではなかった。 ゆっくりとゆっくりと。思いを見つけていくうちに、壊れる道が見えてくる。やりきれない展開にとてもドキドキ。→ 感想

ANGEL+DIVE CODEX(1)

「ある意味ではそうかも。ウイルスとは違うらしいけど、それに似たものに感染して、発症することで、デイジェネレータは生まれるみたいだから」 「原因はわかってるの?」 「エンジェルダイヴ」 「……天使が、降りてくる……?」 「って呼ばれてる。それが、あ…

いつも心に剣を(1)

ユユはもう、他の人間たちとは違うのだ。それなのに、やっぱり人間なのだ。 アーナはユユの肩にそっと手を置いた。まぎれもなく人間の、女性の手だった。 「わたしやあなたが何者であるかなど、本当はさしたる問題ではありません。大切なことは、わたしやあ…

ANGEL+DIVE 3.LOVENDER

「待っててくれてもいいし、待っててくれなくてもいいです」 手をのばしてコップを床に置く間も、彼は春から目をそらさなかった。 「俺は勝手に追いかけますから」 一、二巻をすべて飲み込んで明らかになるラストの驚愕!これはすごい。ほんと面白かった。第…