十文字青
「時が人を置き去りにすることはない」 父の声だった。 「人は時とともに変わりゆくものだ。あらゆる事物は変化しつづける。希有。お前を取り囲む環境も、またおまえ自身も、その流転から逃れることは叶わぬ」 「わたしは、変わりたくなんかない」 「望むと…
「真鳥衣慧君。そして、真鳥織慧君」 黒雪の声がいつになくかすかな熱を帯びていた。 「私のハトルによれば、君たちは夏彦君とすれ違うだけのはずだった。出会うことはないはずだった。むろん、希有とも、私ともだ。それにもかかわらず、君たちはここにいる…