テンペスト(上) 若夏の巻

「役人は何を残すことができますか?農民は食べ物を与え、商人は生活を豊かにする品を与えるというのに、役人は物を生み出すことができません。役人は道を示すことでしか残れないのです。名誉など道の前では塵にすぎません」
寧温は続ける。自分は王府の役人が残してきた流れの中にいる存在であると。
「私は王朝五百年の歴史の中で見ればひとりの役人にすぎません。しかし私は今まで王朝を支えてきた、たくさんの役人たちの道の上にいます。名もなき彼らは立身出世とは縁がなかったかもしれません。彼らは常に王府を監視し、不正を糾し、そのせいで王宮を去ったこともあったでしょう。でも道だけは残してくれました。今、私が怖じ気づいて保身をしたらこの道を塞いでしまうことになります。次の世代の役人たちが途方にくれないためにも、私が道を示すのです。たとえ討たれて王宮を去ることがあっても、道だけは残します。それが役人の務めです」

宦官に扮した少女が、他国の干渉に怯える琉球を立て直すべく奮闘するお話。政治的交渉における駆け引きに抜群のものを持ちながら、、内での権力争いに巻き込まれて、頂点から流人にまで身を落とすような展開に引き込まれっぱなし! → 感想