藤谷治

船に乗れ!(1) 合奏と協奏

「私、誰に聴いてもらわなくてもいい」南はいった。「とにかく演りたい」 それは自分のヴァイオリンにプライドを持っている、一人の音楽家の言葉だった。僕はその力強さに打たれた。 「うん演ろう」僕はいった。「とりあえず明日から、二人で合わせてみよう…