光降る精霊の森

森の警備員として働く元修道士のエリ。
ある嵐の夜、まるで犬と見間違うほど大きい黒猫と出会った。小さな少女ファティを連れた黒猫と。
精霊である黒猫は言う。「僕らと一緒にデェエフまで行って欲しい」
少女であるファティを保護するものが必要だと。
なんで自分が!と拒否したものの、黒猫は譲らなかった。
「取引をしよう。君に取り付いている精霊を落としてやる」
誰にも教えたことのない自らの影。それが見えるということはやはり自分には何か憑いているのか。
かつて犯した罪により、デェエフには行けない。そう思いつつも、憑いているものへの不安、そして修道士として小さな子を見捨てることができないエリは、しぶしぶ一緒に行動することにした……。


ファンタジィだからといって特段魔法を使うわけでもないし、剣によるバトルがあるようなきつい旅になるわけでもない。
それでもこんなに惹かれるのは物語全体から漂う雰囲気からか。
エリと黒猫ゼッテの掛け合いにニヤリとし、エリとファティの関係に暖かなものを感じ、主人公の苦悩にううむとうなり。後半はちょっとご都合主義的な展開でしたが、ラストでストンと決められていい感じ。
いい意味でオーソドックスな展開のストーリィ。
第一回 C★NOVELS 大賞大賞受賞作。
次作も期待です。


光降る精霊の森 - 藤原瑞記