誰か

コンツェルンの会長である義父の専属運転手である梶尾が亡くなった。
自転車に跳ねられ、頭を強く打ったのが原因。犯人はまだ捕まっていない。
梶尾の娘たちは、そのことに心を痛めていた。
父がどんな人だったのか、犯人に知らせたい。父についての本を書きたい。
そんな梶尾の娘たちの相談に乗ってほしい。義父からの依頼だった。
依頼を受けた杉村は、梶尾の事件と過去をたどり始めた。
だが、そこには暗い影が待ち受けていた……



平凡でこれという取り得もなく、でも日常生活は安定していて、ほのぼのと幸せ。
この作品はそういう人物が主人公です。
著者のことばどおり、まさにそんな主人公が追う事件。


誰もが持っているささやかな秘密。
大きくなりがちな子供のころの記憶。
自分の妻と娘とのやり取りが起点となる道筋。
うまいなあ、と思わず言いたくなる展開。
キーワードは子供はすべての暗闇にお化けの形を見出す


ちなみにぼくとしては、事件の謎もさることながら杉村家族のやり取りをじっくり読んでほしいかなと。
特に四歳の娘との会話といったら!
ほのぼのとしていて、時にハッとさせられて、思わずにやけてしまう。
この部分を読むだけでも、この作品を読んだ甲斐があったというもの。
ぜひ、宮部みゆきワールドを堪能してください。
オススメな良作。


誰か - 宮部みゆき