裏庭

照美には祖父母はいない。だから友人の綾子のおじいちゃんの話を聞くのはたのしかった。
それはおじいちゃんの小さいころの話。
丘の麓のバーンズ屋敷に何か秘密があることは、当時のその辺りの子どもなら誰でも知っていた。
「私達は裏庭を持っているの」
そう語ったのはバーンズ家の長女レイチェルだった。
それは普通では絶対に入れない庭。鏡を通じて行き来する場所。
妹のレベッカは庭師として抜け道から出入りする。
その話を覚えていた照美は、ある日バーンズ屋敷に入り込んで……。


かまってくれない親から離れて向かった先でたどり着いた「裏庭」。
そこで決断したこと。そこで見つけたもの。
立ち止まったときにそこで出会ったものたち。


「今来た道を戻るのですか?」
「いえ、今来た道を、更に進むのです」


バーンズ家の「裏庭」。その不思議な空間を取り巻く物語。
なんて素敵な雰囲気をかもし出す物語なんだろう。
読んでいてこんな気持ちになれる物語なんてそうない。
西の魔女が死んだ」と同様、心あたたまるファンタジー
第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作。


裏庭 - 梨木 香歩