梨木香歩

家守綺譚

― サルスベリのやつが、おまえに懸想をしている。 ― ……ふむ。 先の会談はその故か。 ― 木に惚れられたのは初めてだ。 ― 木に、は余計だろう。惚れられたのは初めてだ、だけで十分だろう。 すっばらしい!家にまつわる動植物&異界のものの風景が、美しく幻想…

裏庭

照美には祖父母はいない。だから友人の綾子のおじいちゃんの話を聞くのはたのしかった。 それはおじいちゃんの小さいころの話。 丘の麓のバーンズ屋敷に何か秘密があることは、当時のその辺りの子どもなら誰でも知っていた。 「私達は裏庭を持っているの」 …

西の魔女が死んだ

夏になるといろいろな出版社が出してくる夏の100冊。 この本は新潮文庫の100冊。 「わたしはもう学校へは行かない。あそこは私に苦痛を与える場でしかないの」 そう言い出したまいに、母は観念してきつく問い詰めるよりも……と、まいはおばあちゃんのもとで過…