セリヌンティウスの舟

遊びでいったダイビングで一緒に潜った。それだけの係わり合いのはずだった。
だが、海は荒れ、僕らは漂流した。助け合って生還した僕らは、もはや他人ではなかった。
生死を共にした仲間。年齢も違う僕ら六人の結びつきは硬かった。
永遠に続くかと思った仲間同士の交流。崩壊したのは、一人の女性の死。
それも自殺で。


「彼女が自殺したという事実を、私はまだ心の中で処理できていない」
亡くなった女性を偲ぶために集まった四十九日で一人が言い出した言葉。
それぞれが最後の日を思い出しながら話し合っていたとき、磯崎が言い出した。
「本当に自殺なのか?」
それは自殺と思われていた彼女の死に、不審な影を映し出す一言だった……。


仲間を疑いたくない。だが、否定する材料がない。
仮説は否定され、また新たな仮説が生まれ、結論と思われた矢先に否定材料が見つかる。
5人の人間がただひとつの出来事について語り合うだけのなのに、いつしか自分も議論に
参加しているかと思うほどのめりこんでしまいました。
そして明かされる意外な事実。それでも許してしまうだろう。


「責めたりはしない。身勝手で、友達に迷惑かけてばかりのメロスだけど、責めたりはしない。だって、わたしたちを裏切ってはいないもの」

もし僕が仲間の一人であったとしても、間違いなく即答できる。


そしてそしてさらに驚かされる衝撃のラスト。
まさに、これぞ本格ミステリィだよ!
間違いなくオススメな作品です。


ルールはひとつ。信じること。


セリヌンティウスの舟 - 石持 浅海