石持浅海

攪乱者

「今回の任務は、これだ」 「これ?」 レモンをテーブルに出して「これが任務だ」と言われても、何のことかわからない。 「そう。これが任務だ。君たちには、このレモンをスーパーマーケットの店頭に置いてきてもらう」 「は?」 非合法組織の活動を描く短編…

人柱はミイラと出会う

「ミイラにした?」どういうことだろう。「ミイラには、たまたまなったんでしょ?」 「気候的にはね。でも、あの死体は防腐剤と一緒にされてたでしょう?冷え切って乾燥した室内。防腐剤と一緒に保管された死体。これってミイラの製造工程そのままじゃない」…

君の望む死に方

梶間くん。 私は余命六ヶ月だそうだよ。死ぬといわれても実感はわかないけれど、もう十分に生きたという手応えはある。この命、惜しくない。 だから、どうせ死ぬのなら、君の望む死に方をしてあげよう。 私は、君に殺されることにしたよ。 殺される側から描…

心臓と左手 座間味くんの推理

「それが、あまりめでたくもないんだ。ちょっとした難問にぶつかっていてね」 「なんです?」 「君は」大迫はビールを飲んだ。「密室殺人って信じるかい?」 素晴らしき切れ味の安楽椅子探偵ものでした。最後の短編は、謎解き要素よりも、雰囲気にやられたな…

顔のない敵

「駄目だ。死んでる」 由紀子は倒れていた。 「どうして……」 「殺されているんだよ」 電気が通じない暗闇に閉ざされたエレベータで。 金沢が答えた。「ナイフで胸を刺されて」 「それも」水島が続けた。「この中の誰かにな」 最後の短編は特に一読の価値あり…

セリヌンティウスの舟

遊びでいったダイビングで一緒に潜った。それだけの係わり合いのはずだった。 だが、海は荒れ、僕らは漂流した。助け合って生還した僕らは、もはや他人ではなかった。 生死を共にした仲間。年齢も違う僕ら六人の結びつきは硬かった。 永遠に続くかと思った仲…

扉は閉ざされたまま

そこは友人の兄が経営するペンション。 大学時代のサークル仲間の集い。狙うはただ一人。 綿密な計画。用意された会話。そして最後の決意。 そこで伏見は新山を事故死に見せかけて殺し、仕上げとして扉を閉じた。 開くことが無いように・・・。 犯行シーンか…

BG、あるいは死せるカイニス

何年ぶりかで訪れる流星群。 天文部の部長である姉は学校へ行き、自分は家のベランダから眺めた。 明くる朝、学校へ行くと教師が校門に立ちはだかる。 「本日は休校です。生徒は帰宅しなさい」 その教師が自分に向けた表情を見たとき、何かがあったことを実…

月の扉

師匠が逮捕された。無実であるにもかかわらず。 だが、「時」は刻一刻と迫ってくる。 彼を表に出すにはどうするか。事件を起こすしかない!逃げられなくてもいい。 ただひとつの要求さえ通れば。 そして、三人は離陸直前の飛行機をハイジャックした。 だがそ…

水の迷宮 [amazon][bk1]

羽田国際環境水族館。三年前に職員のひとりが亡くなったその命日に1通のメールが届いた。 「東京湾の汚染はひどいですね」 短い一文を理解した職員が東京湾を模した水槽へ行くと、その水槽にはアルコール入りのビンが投げ込まれていた・・・。 次に送られて…