街の灯

「我々のような人間とそうでない人たちのいることは、とても不当なことに思える。でも、実際に、今のような家を見て、≪あそこに住め≫といわれたら、震えてしまう。とても出来ない」
「お嬢様―」
ベッキーさんは、静かにいった。
「≪あのような家に住むものに幸福はない≫と思うのも、失礼ながら、ひとつの傲慢だと思います」
わたしは、やさしく叩かれたような気持ちになった。

昭和七年。私とベッキーさんが遭遇したちょっとした謎物語。 → 感想