北村薫

鷺と雪

「いえ、別宮には何もできないのです―と」 「……」 「前を行く者は多くの場合 ― 慚愧の念と共に、その思いを噛み締めるのかも知れません。そして、次に昇る日の、美しからんことを望むものかも―。どうか、こう申し上げることをお許しください。何事も ― お出…

玻璃の天

「真実が、もし本当に確かめねばいけないものなら、明日にでも末黒野さんのお宅に参らねばなりません。その判断をお嬢様におまかせするなら、別宮は卑怯者になってしまいます。 ― 参りましょう、明日」 ベッキーさんの過去に胸が痛くなります。 → 感想

ひとがた流し

「彼女、今、病気でしょう?」 彼女は黙ってうなずいた。 「気が弱くなっていると思いますよ。こんな時にどうこういえませんよ。付け込むようで―」 「付け込めばいいじゃないの!」 意外な切り替えしだった。 「―こだわるポイントがおかしいわ。いい、あなた…

街の灯

「我々のような人間とそうでない人たちのいることは、とても不当なことに思える。でも、実際に、今のような家を見て、≪あそこに住め≫といわれたら、震えてしまう。とても出来ない」 「お嬢様―」 とベッキーさんは、静かにいった。 「≪あのような家に住むもの…

七つの黒い夢

ひとりでも知ってる作家がいるなら、超お買い得なアンソロジィ → 感想

ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件

エラリー・クイーンが来日した1977年。 日本では連続誘拐殺人事件が勃発していた。 ひょんなことから事件にかかわったクイーンはその事件を執筆したが、 その作品が発表されることはなかった。 その作品、「The Japanese Nickel Mystery」と題された未発表の…

語り女たち [amazon]

本を読むのが好きだったが、あるときから視力が落ち、読むことがつらくなってしまう。 だったら人に語ってもらおう、どうせなら女性のほうがいい。 そして語られる17の物語。 ひとつひとつの物語は5分もかからず読めてしまいますが、不思議な体験、甘い話、…