桜行道

「ここを出て、また彷徨うようになって、だ」
不意に一真が呟くように言い、籐也は少し驚いて口を噤んだ。
「いつか、どこにいてもいい、一瞬でもここに戻りたいと思ったなら、いつでも帰っておいで」
「……」
「たとえばそこが赤の他人の家でも、誰かが待っていて、お前が戻りたいと思うなら、そういうのを家というんだよ」

これはとてもいい。ひょうひょうとした天狗の周平と周平にだけはうるさい籐也の根無し旅。ふいに見せられる切ない思いには胸が痛くなりますが、行く先々で出会う人たちとの温かさが素晴らしかった。別れの時、顔を出せと言われるっていいですよね。→ 感想