白蝶花

「結婚は、していません。父親も、兵隊に行きました」
「……」
「一人で生きていかなきゃいけないんです、私は」
千恵子は吹雪の荒れた手を取った。
「ねえ、男の人に頼らず一人でも大丈夫だと、生きてゆけると言ってくださいませ、お姉さま。千恵子さんなら大丈夫だと、おっしゃってください」

望んではいけない恋。でも抑えきれない思い。狭間に立たされた人のやるせなさに胸が詰まる。戦時中のお話は特に……お国のために失われた命と、残されたものの悲しさと強さが印象的でした。最後に繋がっていく構成にやられた。→ 感想