神の棘(1)

「SAより、SSのほうが恐ろしい。だが俺には、さらにあんたたちSDのほうが恐ろしく見えるね」
ベトケは息をついた。
「おまえさんの理性が、いつかおまえさんに復讐することがないようにと願うよ」

ドイツ共産党の生き残りを見つけ出し、カトリック教会を失墜させる為に、友として人に近づき、信用を勝ち取って、裏切っていく。己を正義と思っている人たちの残酷さが胸に痛い。また大衆がそれを支持していくんだから、この時代、ドイツがどれほどの絶望に覆われていたかが伝わってきます。裏切った者と裏切られた者との確執は、やがて行き過ぎていくうちに変化をもたらしていきますが、これまで他に振り下ろしていた刃が自らに降りかかってきたとき、彼がどうするのか。続きが気になります。→ 感想