瀬尾つかさ

白夢 放課後の霧使い

「何て無茶なんだろう」 僕は思わず口に出していた。 「雪姫、君は何て向こう見ずで、無茶苦茶で、でたらめで、がむしゃらで、パワフルで、勇ましくて……」 凄いな。心底そう思った。 霧に紛れておそってくる<はぐれ>と霧を操って戦う少年少女のお話。弱さ…

クジラのソラ 04

「門倉聖一!あんたは今、幸せか!」 走った。ひたすらに。 「あんたは下柳さんに胸を張れるのか!それとも『僕が守りたかった』って彼女に愚痴をいうのか!」 「僕は、そんな!」 「じゃあどうしたい!あんたは今、何をすればいい!」 「答えろ、門倉聖一!…

クジラのソラ 03

そうだ。失ってたまるものか。 守るのだ。大切なものは、守ればいい。 この事件の陰で糸を引く卑怯者よ。 見てるがいい。驚愕するがいい。 桟敷原雫は黙ってやられるようなタマではない。 やられたら十倍にしてやりかえす、そんな女だとよく知るがいい。 不…

クジラのソラ 02

「桟敷原雫は、わたしのかけがえのない戦友で、大切な友達だよ。だからお願い。一緒に戦って。わたしの背中をあなたに預けたい。肩を並べて戦いたいって、あなたはわたしに生まれて初めてそう思わせた人だから」 「冬湖、わたし……」 「雫。あなたと一緒なら…

クジラのソラ 01

「でも、だったら冬湖は、そうなるかもしれないとわかってて……」 「冬湖と君を引き合わせたのは僕だ。だけど、どのみち僕が<ゲーム>に復帰するとなれば、冬湖は何らかの決断をしなければならなかっただろう」 聖一は、なるべく感情がこもらないよう気をつ…

琥珀の心臓

「何だよ、これ!」 自分たちは修学旅行に来ているはずだった。そのバスに乗っているはずだった。 なのに、今いるところは……。 太陽の色が違う。植物の種類も見たことが無いものばかり。 クラス全員が巻き込まれたここはどこなんだ? 呆然としていても何もで…