十八の夏

浪人生活が始まった春。宙ぶらりんな毎日が突然変わったのはその女性を見かけてからだった。
河原で絵を描いている女性の姿は、それ自体が絵のようだった。
そんな彼女とひょんなことから知り合い、家を訪問する機会を得たぼく。
恐ろしいほど粗末なアパート。ベランダには不釣合いな朝顔の鉢植えがあった。
お父さん、お母さん、僕、私と名づけられた朝顔
その当時、ぼくは朝顔に込められた秘密を知らなかった……。


いわゆる恋愛ものかと思っていたらいきなりのどんでん返しが待ち受けている
表題作「十八の夏」は第55回日本推理作家協会賞を受賞した短編。
文章としい、センスといい、非常にぼく好み。
― 十八の夏がもうすぐ終わる
自分がその歳のときはどうだったろうか。ふと、記憶をたどってしまう物語。


その他、書店で働くもの同士の恋愛を描いた「ささやかな奇跡」
ジョギングの途中で見かけた女性に一目ぼれした兄を描いた「兄貴の純情」
かつての塾の教え子の両親が無くなった事故の真相を描いた「イノセント・デイズ」
という四篇からなる短編集。
どれもこれも読んでいるときに驚きを受けること、間違いない。
感性に触れる珠玉の短編集。


十八の夏 - 光原百合