2006-06-28 時計を忘れて森へ行こう book 光原百合 「翠さん、ゆうゆう倶楽部での弥生さんのこと、覚えている限り話してくれませんか」 わたしは護さんを見上げた。首が疑問符の形に傾くのが自分でわかる。 「細かいことでいいんです。夜キャビンで話したこと、散歩中におしゃべりしたこと、何でもいいから、思い出せる限りのことを」 首の位置を戻すと疑問符か感嘆符になった。護さん事実という糸をあつめはじめているのだ。真実という物語を織るために。 悲しみを癒すことは神様と時間にしかできない。だけど、苦しみを悲しみ蒸留することは、もしかすると人間にもできる。 心に染み入る優しく切ないミステリィ → 感想