新釈 走れメロス 他四篇

「それだから走っているのだ。芹名はいっさい承知の上だ。彼には俺というものが分かっている。これは信頼しないという形をとった信頼、友情に見えない友情だ」
「そんなのは詭弁だ、そんな友情があるものか」
「あるのだ。そういう友情もあるのだ。型にはめられた友情ばかりではないのだ。声高に美しき友情を賞賛して甘ったるく助け合い、相擁しているばかりが友情ではない。そんな恥ずかしい友情は願い下げだ!俺たちの友情はそんなものではない。俺たちの築き上げてきた繊細微妙な関係を、ありふれた型にはめられてたまるものか。クッキーやくのとはわけがちがうのだ!」

五篇の中では「走れメロス」がピカ一でした。元となった話が一番読みたくなったのは「桜の森の満開の下」→ 感想