八朔の雪 ― みをつくし料理帖

― 安うて、美味しいて、みんなに喜んで食べてもらえるもんがええなあ。
何かを美味しい、と思えれば生きることができる。たとえどれほど絶望的な状況にあったとしても、そう思えばひとは生きていける。

幼い頃に両親を亡くし、大阪から江戸へ渡ることになり、料理の腕前はあっても女などと言われることや、江戸の風味に慣れるのに時間を要したりと、多くの苦労を重ねるんだけど、そんなとき出会う人が彼女を支えてくれてくれるんです。これが何と温かいことか。それまではただ美味しい料理を目指していた澪でしたが、安く栄養のあるものをと、毎回新しいことに挑戦しては失敗して、下がり眉をさらに下げて、恥をかき、それでもめげずに試行錯誤していく。これほどの思いが込められた料理が美味しくないわけないじゃないですか!ああ、こうやって人は成長していくんだなと思いました。→ 感想