森岡浩之
「きっとすごく退屈だよ?いつまでかかるか判らない。そのあいだ、星界軍を離れていて、我慢できるのかい?」 「我慢する」ラフィールは怒ったようにいった。「わたしは領主でもあるんだぞ。地上世界を拓けば、諸侯になる。気が早いが、見学するのもいい経験…
「かまわないわ。お母さまがあたくしの考えを採用なさらないときは、きっともっと愉快なことを思いつかれたときだもの」 ペネージュは真剣な顔になり、 「わがレトパーニュ大公爵家の当主が残酷になれるほど地上の民に関心を持ったとき、なにを考えつかれる…
「察しろ、とはいわない」 「助かります」警戒しつつ、ドゥヒールはいった。 「感じとれ」 「どうちがうんですか?」 「まるでちがうだろうが」 大局へと動きはじめた戦記物語 → 感想
「そうだな、大臣じゃなくて、おまえの後宮の管理なら引き受けてやってもいいぜ。寵姫が何人いるか知らないが、それならばっちり任せてくれ。おれに似た若さまやお姫さまが生まれるかもしれないが、ほんの偶然に決まってるから、気にするなよな」 「相変わら…
「わたしはどんな顔をしてあの者を出迎えればいいのであろ」 「そいつは、艦長が誰を迎えるつもりかによりますなぁ」サムソンは肩をすくめた。 「どういう意味だ?だれを迎えるのかはきまってるじゃないか」 「ああ、つまりですね」サムソンは頭をかきながら…
「なあ、もしも艦長が不機嫌なようだったらきみはどうする?」 「そりゃ、なんとかなだめようとしますよ」ジントはこたえた。 「先任翔士」サムソンは質問の相手を変え、「あなたならどうします?」 「急用を思いつくよ」ソバーシュは即答し、すこし間をおい…
肩にかかるラフィールの重みを意識すると、ジントの思考はまったくべつの方向へ飛んだ。 かつての彼女なら、こうやってすなおに肩を借りなかっただろう。航海日誌をもってジントにひとりで行け、と強行にいいはったにちがいない。 うれしかった。 素敵なボー…
「やあ、ラフィール」 「そなた、怪我はないか?」ラフィールはその場を動かず、尋ねた。 「ごらんのとおり」 「よかった。そなたはわたしの大切な荷物なんだからな、怪我をしてもらってはわたしが迷惑する」 ジントは前男爵の耳に口を寄せ、「ね、これで王…
「謝ることはない。正統な呼称ならどれでも受けよう。安んじて、王女殿下とでもバリューニュ子爵殿下とでも好きに呼ぶがよいぞ。伯爵公子閣下」 「いや、ぜひラフィールとだけ……」 「誤解するな。わたしはべつに『ラフィール』と呼んでほしいわけじゃないぞ…