「お兄ちゃんの言う通り、こんな能力嫌っていたこともあったけど、私の……ううん、みんなの、こんな能力はさ……」 そっと俺の手を包み込む美智乃の手が、ぼうっ、と淡い光を放った。 「こういうときに、諦めないためにあるんじゃない」 家族の繋がりと人を思う…

「だからさ、あたしお姉ちゃんとして一度くらいはそのわがまま聞いてあげたいとか思うわけ」 そう言って、彩姉ぇの目が俺に向いた。 「あんたはどう？」 俺はへっと笑い、 「馬鹿野郎、こちとら七姉ぇのやりたい放題に付き合うのが日課だぜ。今さらそれが一…

「え、なに、と、泊まる？泊まるの？うそっ、やだ、なんっ……！あ……事情、ああ、ちょっと事情がね。うん、はい、そうだよね。事情が。人にはいろいろ事情があるよね。うん、そういうものだよね。え？いやいや、勘繰るなんてそんなそんなっ！お母さんには適当…

「今のあんたじゃ、刻人君には勝てないわ。きっと」 同感。たとえナイフを使ったとしても今の刻人には勝てない気がする。たった一人の女の子のために躊躇うことなく世界をあっさり裏切ったスペシャルな馬鹿にどうやったら勝てるっていうんだ？ たった一人の…

「そして私もヒーローなんかじゃない。四年前、悩む友達に馬鹿な話持ちかけてその場しのぎの励まししかできなかった間抜けだよ」 七美はなおも咲に語りかける。 「頼るなよ咲。あんなバケモンにも私にも。お前の人生お前のものじゃんか。お前が自分で切り開…

追いかけろ！追いかけろ追いかけろ追いかけろ！ そうだ、これは本来俺の役割じゃないんだ。今までいったい何してやがったんだ。ひたすら追いかけろ！惚れた女を救う、ただそれだけのために、自分の世界に戻るチャンスをフイにして魔王まで倒してしまったその…

「手、痛むからさ……」 「これくらいだいじょうぶ」 無理しなくていいんだ。今は、本当は俺がなんとかしなくちゃいけないのに。 「いいって……」 それだけしか言うことができなかった。もっと言いたいことはたくさんあるのだが、そう言うことしかできなかった…

「それで、ようやく求めていたものが見つかったんだ。なんというかまあ、『心の空白』とやらが埋まったのだよ。こんなものがあるなら、まだ生きていてもいいかと思えるほどのね。それがなんなのか、言わなくてもわかるか？シノンと、そしてお前たちだ。だか…

「どうした小僧！恐怖で頭がおかしくなったか？」 そうじゃないんだ、そんなんじゃないんだよおっさん。俺はなんだか嬉しくなっちまったんだ。またこの声が聞けるなんて！ ああ、なんで俺はこんなに喜んでんだよ？敵が復活しちまったのに、なあっ！ ありふれ…

「あんたの努力しだいね」 どこか澄ました口調で言って、柚島が笑った。こうしてちゃんと笑顔をまともに見るのは初めてだ。口が悪いだけの女の子と思っていたが、どうしてどうして。笑うとなかなかかわいいじゃないか。 オーケーお姫さま。こんな非力な騎士…