比嘉智康
「ねぇ、十勝。お願いがあります!」 「おう、なんだ?」 「忘れられなくて、衝撃的で、何度思い返してもハッピーになっちゃうような、このためにあたしの人生ってあったんだって思えるような、とっておきの思い出をちょうだい」 うむにゅ!はどうかと思う。…
「よし聞いてやろうじゃねえか。おれのどこが鈍感だって言うんだい、お嬢さんよ」 「だって十勝ちゃんさ。うちの気持ちにまだ気づいていない……でしょ」 あの日常はどこへいったんだと思うほどのシリアスモード。気遣えば気遣うほど溝が深くなるこの展開はや…
今日は、雲二つか三つしか視認できない晴天。 気心の知れたメンバーと、学校帰りに年に一度の夏祭り。 財布には軍資金もなかなかある。 これだけの好条件が揃っていて、今日の下校をとびっきり楽しめなかったら、これはすなわち……下校家の名折れだ。 夏休み…
「うげっ。祝日のない十週間ってぜんぜんゴールデンじゃないじゃん。サイアク」 「どこが最悪だよ。確実に週五で下校できんだぜ」 「この下校バカ!どんだけ下校好きなのよ!」 たしかにこんな毎日を過ごしたら、GW10も辛くないよなあ。みんながいるから楽し…
事件なんていうと「なんか大袈裟だね」と丹下あたりに笑われそうだけど、そんなの気にしねえ。 下校時に起こることは、野良ネコに遭遇して癒されることだって、夕日がバカみたいに綺麗でちょびっと感動することだって、好きじゃない同級生から面倒な頼まれ事…
「ネーでもさ、それって、うちらは心配しなくてもいーんだよね?あーあ、別にうちらに無関係っていってるワケじゃないからね。だってさっきギャルゴがいってくれたじゃん。みんなを無事にもとの世界に戻すって。うちはギャルゴなら、きっと約束守ってくれる…
正直時速150キロの車からコンクリートの地面にダイブするのが怖くないわけなかったが、唇に残った甘酸っぱい感触が、ぼくにしっかりと勇気をくれていた。 かわいい子のキスのご褒美があれば、中学二年の男子はどこにだって飛べるよな。 終わるかと思ったらま…
「いつだって忘れない。春男くんは強い人。えへへっ」 コトリさんらしい。それだけいって、手を振って階段を下りていく。 きみは意味不明になっていないだろうか。思い出してくれ。 いつだって忘れない。エジソンは偉い人。そうだろ。 相変わらず素敵な語り…
「そのぼくはさ。コトリさんのためならなんだってしたいと思うんだ……だけど、そのお願いはきけないよ。ごめんね」 「春男くんっ。私も演劇のためならなんだってしたいて思ってるのぉ。舞台に立ってお芝居がしたいのっ。春男くんに舞台見てほしいし。お願いし…
「……ねえ、私はね。デマ地伝がね。本当のことにならないかって、少しだけ信じてるところがあるんだ」 「……この意味わかっちゃいましたか?」 コトリさんが可愛いなあ。それにしても最後の謎明かしが素敵だった。思わず納得で膝うち。→ 感想
「さすが、わたしの彼だわ。かっこいい春男!」 うしろからエリアスの声が聞えた。 どうせ、モテない人生。この時ばかりは人形が彼女だっていいじゃないかと思えた。だって、ぼくのことを励ましてくれる女の子なんて学校にはいないしね。 これは面白かった。…